片岡の笑顔 ラミレスの当惑
日本シリーズ第5戦 西武3―7巨人(11月6日 西武ドーム)
この試合の7回1アウトの時、印象深い出来事があった。
このことに実況のアナウンサーは一切触れず、メディアのニュースも言及していない。
主役は巨人ラミレス、西武片岡(ショート)
脇役は二塁塁審
巨人が1点を追う7回。
ここまで巨人を2安打に封じていた涌井の低めのボール球を、ラミレスがセンターに打ち返す。
涌井のわずか左横を地を這うように通り過ぎた打球が、セカンドベースの右端に当たったことでそれは起きた。
本来ならば、ボールは勢いよく中堅手の前に到達し、打者走者は一塁で止まる。
しかし、ベースに当たって勢いを失ったボールは、右翼手の前にのろのろと転がっている。
打球が死んでいる。
そう判断したラミレス 「一塁コーチの福王が止めていた」と思ったが二塁へ。
映像が右翼手とラミレスの相対位置をとらえた時、巨人ファンは凍り付いた。
ラミレスはまだ一二塁間の中間あたりにいる。
「暴走だ・・」
打順から言って、この回に追いつかないと巨人は苦しい。
8回は下位打線に回り、9回は抑え投手が出てくるだろう。
さぁ、追い上げだと思ったヒットが、二塁憤死という最悪のケースになれば、いくらなんでも勝負の流れは相手に傾いたかも知れない。
しかし、走り出してからが速いラミレスは、ここから加速した。
タッチをかいくぐるために、セカンドベースの左側に回り込む。
足が先にベースに着いた。
ボールが後から来た。
セカンドベースカバーに入ったショートの片岡。
ラミレスの足に「ぱしーん」とグラブを当て、左手を高々とあげてアピール。
二塁と三塁を結ぶ線上にいた二塁塁審が、近づきながら両手をさっと広げる。
審判の裁定を待つまでもなく、悠々とセーフだった。
巨人ファン、安堵のため息
と思ったら、加速したうえに左に回り込んだことで、ラミレスの体勢が崩れた。
ベースから離れようとする右足。
腹筋を使い必死に踏ん張るラミレス。
だが、加速していた余力を殺しきれず、わずかに接していた足がベースを離れた。
それを見た片岡。高々とあげていた左手ですかさず、タッチにいく。
グラブはセカンドベースとラミレスの右足の間に挟まった。
少しかがんで目を凝らす二塁塁審
それを見上げる片岡
戸惑うラミレス
一難去ってまた一難。巨人ファン、またも凍り付く。
今度は固唾を呑んで裁定を待つ。
審判の両手は、再びゆっくりと両横に広がった。
特に指さし確認をしたり、言葉で説明したようには見えなかった。
そして、カメラが三塁方向からのアップに切り替わった時、その瞬間がきた。
片岡が笑ったのだ。
「ごめん」と右手一本で拝むジェスチャーで、ラミレスに謝りながら、笑っている。
ラミレスは真意の読めない当惑の表情を見せている。
片岡は元々ルックスがいい選手。
さらに、さわやかな笑顔が戦場に咲いた一輪の花を思わせた。
完成当時「野つぼ」と揶揄された西武球場(現西武ドーム)に涼風が吹いた。
この場面について、報知新聞に掲載された渡辺監督のコメントは次の通り
「相手(巨人)に勢いを付ける好走塁だった」
実際はどのように話したかわからないが、紙面で見る限り「あれはアウトだ」とは言っていない。
11月10日に続く
| 固定リンク

