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2009年7月17日 (金)

五島のいじめ

 山口ではいじめっ子だった僕にとって、五島の暮らしは楽ではなかった。
 僕はいじめっ子と言っても、ただ一人で女の子にいたずらを仕掛ける。
 まさか、これくらいでと思うようなことで、女の子は泣く。
 それを、取り巻きが職員室に通報する。
 放課後の「反省会」で僕が糾弾される。
 「もう、しません」
 僕がそう言って、一日が終わる。
 その繰り返し。
 それでも、フシギと女の子から避けられたという記憶はない。

 ところが、五島の子供達は気性が荒い。
 山口の盆地でほたるを眺めて育った子どもと、父親がイルカに銛を突き立てるのを眺めて育った子どもの間には、大きな差があった。

 些細なことですぐ、諍いが起きる。
 冗談が通じない。
 しかも、徒党を組む。
 いじめ方が陰湿なのは都会っ子と相場が決まっていたが、五島の子どもも負けてはいない。

 その日は僕がいじめられる番だった。
 校門を出て家路につくと、後ろから五人組が着いてきた。
 「足んみっちょか~」=足が短い
 「ペーロンにのらんでずるかー」=説明割愛
 「かっこばっかつくんな」
 代わる代わるの罵詈雑言が背中を刺す。

 いったい、どういう順番で、台詞はどのように決まっているのか、聞いてみたい気がしたが、バカは相手にしないという主義なので、先を急いだ。
 僕の家は学校から2番目に遠かった。
 榎津で3人が隊列を離れ、後を託された2人が、引き続き、僕をなじり続ける。
 しかも、その2人は下級生のハラとユカワだ。
 2人はさすがに上級生相手では、気が引けたのか
 「ば~か」と言いながら、走って僕を追い越していった。

 僕はノーコンだった。
 キャッチボールは相手の胸を目がけて投げろ!
 そう何度言われても、ボールはとんでもないところへいく。
 狙った的には当たらないという、絶対の自信があったので、咄嗟に足下にあった石を拾って、2人を目がけて投げた。

 浦桑へ向かう長い下り坂
 石は糸を引くように水平に飛び、道が下っている分、ハラの後頭部のど真ん中を捕らえた。
 石が手を離れて、ハラを捕らえるまでわずか1秒。
 1秒といえば、セシウム133原子の基底状態の二つの超微細エネルギー準位の間の遷移に対応する放射の91億9263万1770周期の継続時間である。
 いや、ちょっと言いたかっただけだが・・

 ハラがその場に倒れて動かなくなった。


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