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2009年7月25日 (土)

かっこつーく、おっとこんき~たっ

 ソフトボール大会準優勝の翌日。
 本来ならば晴れがましい気分の朝になるはずだが、校門をくぐる足は鉛のように重かった。
 昨日の僕の張り切り過ぎが、どんな虐めを呼ぶのか。
 あるいはそれは杞憂に過ぎず、いつもと同じ月曜日が始まるのか。
 その結果は、教室に入った途端に出た。

 僕が席に着くが早いか、スタンバイしていた連中がお囃子に合わせて近づいてくる。
 「かっこつーく、おっとこんき~たっ」
 *格好ばかりつける男が、やって来た

 「かっこつーく、おっとこんき~たっ」
 事前に練習したのだろうか。
 年に一度の学芸会並に、手拍子と足並みが揃っている。
 ぴたりとシンクロしていて、誰かに洗脳されたかのようだ。気味が悪くて、朝食べたアゴがのど元まで上がってきた。
 歌詞を考えたのは、いじめのシナリオを書かせたら右に出る者がいないキダであろう。
 あまりに、統制がとれたお囃子だったため、何十年経った今でも、鮮明に思い出せる。


 共に戦った浦桑のチームメイトは助けてくれなかった。
 浦桑の捕手を務めたジャイアンは、キダの求めに応じて
 「ちょうし、のんな」
 と僕の机を蹴りに来た。空手を習っているジャイアンの蹴りで机がひっくり返りそうになるのを、慌てて僕が支えた。
 ジャイアンは「どうだ。俺はやったぞ」とばかりに、狂気の表情をつくっている。
 彼の空手をもってすれば、クラスじゅうの男子を倒せる。何も畏れるものはないはずだが、如何せん彼は気が小さい。

 だが、ジャイアンを責める気など毛頭無い。元々助けなど求めちゃいない。
 妙な助け船を出されれば、話に筋が立ってしまい、長期化の畏れが出てくる。
 単純な「気に入らない」というレベルの子どものいじめだ。
 時が過ぎれば、やがて嵐のように去っていく。

 今はじっとして、時をやり過ごせばいいのさ。
 目一杯悲しげで、なおかつ、調子に乗りすぎたことを心から悔いているという顔を作りながら、僕は心の中で、そうつぶやいていた。

 こういう時、女子は、虐めに加担しない。
 五島では、男と女の間には厳格な一線があった。
 男が女を虐めるということも、ほとんどない。
 女はただ、男どもの愚行を見守っているだけだった。

 これは、一週間はつづくな・・
 そう諦めていた日の放課後、下駄箱に待っていた男がいた。
 いじめのシナリオライター、キダである。
 きょろきょろとあたりを見回し、周りに誰もいないことを確認すると
 「気にすんな」
 と一言だけ言って走り去った。

 アメとムチで僕を籠絡しようというのだろう。
 おいおい、おまえが首謀者だろう・・・
 そうは言っても地獄で仏。
 一日中、合唱の洗礼を浴び荒んだ気持ちには、そんな戦略的な優しさでも嬉しかった。


 山口に住んでいた時までは、一点の曇りもない少年時代だったが、五島での4年間は大しけの海に放り出されたようだった。
 僕はここで、ひねくれた。
 この4年間がなければ、今とは違う性格で人生を過ごしたことだろう。
 ただそれがよかった悪かったと言うのは不毛なことで、与えられた環境と自らの選択で人は生きる。

 ただ、それだけのことだ。


 ここでは、いくつもの挫折があった。
 その一つがダイエットだ。
 ダイエットに挫折したのではなく、ダイエットに追い込まれたと言うことだ。
 小5で、生まれて初めてのダイエット。
 当時、ダイエットという言葉は無かったので、日記に記されているコトバは「減量」である。

 「足のみっちょかとよなぁ」
 男子だけでなく女子までが、そう言って僕をからかった。
 "みっちょか"には、可愛いという意味もあるのだが、要は足が太くてぱんぱんであると言いたいらしい。

 なにせ、五島の子どもは細い。
 毎日、魚ばかり食べているからだ。 \^^)オイオイ
 かくいう自分も、毎日肉ばかり食べてきたわけではない。むしろ、その逆で山口の盆地に住んでいたのに魚ばかり食べていた。
 魚の方が肉より安かったからだ。
 時代は変わり、今となっては、魚の方が高級品だが、当時は逆だった。

 ところが、五島に来てから食卓に肉が並ぶ日が増えた。
 公務員の父には"離島手当"がつくようになり、手取りが増えたのだ。

 
 豪華になったおかずをみすみす残すことはできない。
 僕のダイエットの矛先は「ごはん」に向かった。
 それまでは、1日1膳。おかずが好きなものの日は2膳。
 それを茶碗半分に減らした。

 今でいう「炭水化物断ち」を40年以上前、小学5年生の僕は一ヶ月続けた。


 そして迎えた翌月の身体検査。
 僕の体重は、前月比 -1.3kg を記録。
 なぜか、身体検査の結果表をみながら講評をする担任のフクダは、
 「moto~ 今日から茶碗 2杯食え~」
 とやって、クラスじゅうが爆笑した。
 僕は心の中でガッツポーズをとりながら、にこにこしていた。
 フクダが「なんの嬉しかとか?」と不思議そうだった。


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