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2014年8月21日 (木)

田舎から東京に近づくにつれて、人が非礼になっていく。

旅の荷物は25リットルのリュック1つ。
早めに搭乗したので、自分の座席列の真上の荷物入れが開いていた。
奥が下っているので、荷物が折れ曲がらぬよう、底辺部を奥にして奥の壁に付くまでしっかりしまい込む。
貴重品や文庫本など、フライトの間に手元に置くものは小さな手提げポーチにまとめておいた。

非常口に面した座席なので、荷物を前席の足下に入れることはできないからだ。
ふたつ隣りのD席に座った女性は(以下D席の女)荷物を足下に置いて、CAから「ひざに置いてください」と注意されていた。

「こちらのお席は非常時に脱出のお手伝いをしていただきますが、ご協力いただけますか?」
僕はすかさず「はい」と答える。
「いいえ」と答えたら、面倒くさいことになりそうだからだ。
D席の女は何も答えない。
CAはそれを意に介さず去って行った。
窓際の一人が手伝えばそれでいいということだろうか。

ようやく管制塔から離陸指示が出て、飛行機は滑走路に向かって走り始める。
1人に1台ずつ設置されている液晶テレビでは、機内非常設備の説明ビデオが流れる。
忍者のキャラクターを使ったコミカルな内容だ。
このようなユーモアの利いた案内は、国内の航空会社では初めて見た。

離陸までまだ時間がありそうなので、読書灯を探す。
機内の説明書は、読書灯のことに触れていない。
天井を見上げると、まぁるいボタンが座席分3つ並んでいる。
CA呼び出しボタンはその隣りにアイコンがついているので、間違うことはないだろう。
少しどきどきしながら、ボタンに手を伸ばした時、前夜腰を傷めていたことを思い出した。
目一杯腰から手までを伸ばさないと、ボタンに手が届かない。
なんとか爪の先でボタンを押すと、瞬時に読書灯が点きほっとした。

飛行機が一定の高度に達したところで、ビデオプログラムが始まる。
テレビの下に埋め込んであるリモコンを引き抜いて、番組を検索する。
映像、音楽、地図・・・

「男はつらいよ寅次郎わすれな草」
のようなものはなくて、オリジナル映像が大半。

地図を選択して、カーナビではない飛行機ナビを見ることにした。
航空各社が"前方スクリーン"で映しているものと同じだ。

お、大分の上だな
もうすぐ愛媛に上陸だな
到着予想時刻が刻々と変わっていくのを、時々確認する。

飲み物サービスワゴンがやってきた。
御用達のスカイマークではなかっただけに、意外に思う。
6種類の飲み物からリンゴジュースをもらった。

羽田に着く。
この日のフライトはおよそ90分。
いつもならば、80分だが、浜松を過ぎたあたりから急に到着予想時刻が10分遅くなった。
「もっと、ゆっくり来い」
とでも、管制塔から言われたのか。

飛行機が完全に停止。
乗り継ぎのバスに間に合わないので、すっくと立ち上がり荷物をピックアップ。

荷物がない・・・

一瞬、目が点になる。
預けた荷物がなくなるならばまだわかるが、自分で置いた荷物である。

いや、そんなはずはない。
目の前にあるのは堅牢な「ガラガラ」
まちがいなく、機内持ち込みサイズを超えている。
検査場の係員が枠を持ち上げて通したのだろう。
あそこには、ルールというものがない。

よく見ると、そのガラガラに押しつぶされ、向きが変わった僕のリュック。
左端へ追いやられたうえ、2つに曲がり、へしゃげていた。

誰だよ、こんなことするのは

口には出さずに、ガラガラをどけて、荷物を引っ張り出して救出。

すると、
長い傘が落ちて来て、僕の頭を直撃した。

まず、他人の荷物の上に傘を置き、ガラガラで押しやったのだ。

むっとしながらも、咄嗟に床に落ちた傘を拾ってしまう、人のいい僕。

その時、体内からぐきっと音が聞こえた。

完全に腰を傷めた。

傘を手に呆然とする。

すみません

後ろの列から、20代前半の女子が言う。
だが、顔が謝っていない。

(やだ~っ キモイ)
と顔に書いてある。

それより、傘をよこせとこちらに手を出す。

僕がそのまま、傘を荷台に戻していたら、恐らく
「すみません」すら言わなかっただろう。

田舎から戻る旅は、東京に近づくにつれて、人々が非礼になっていく。
自分がその一人にならぬよう、他人の振り見て我が振り直さなければならない。

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