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2005年11月13日 (日)

中田英寿と間違うな

 エレベーターを出て廊下を右に折れようとしたところで、警備員に呼び止められた。

 この時点では僕にその認識はなかったのだが、この日は スマトラ沖地震慈善マッチ に参加した 移籍市場換算で634億円分のサッカー選手たちの多くが、このホテルに宿泊していた。
 だが、そうとは知らない僕は テロ対策で海外ではこれくらい警備が厳しいのが普通なのだろうと思っていた。
 「Nombre?」名前は?と聴いてくるので「Me llamo Moto 」とスペイン語ですかさず答える。すると、警備員は手に持っていたA4の白い紙をのぞき込んで何か考え込んでいる。そして僕に紙をかざして

「NAKATA? NAKATA?」
ときいてくる。指さした場所には H.NAKATA の文字がある。

 それでも僕はまさか、それが中田英寿のことだとは思わない。きっとこの警備員が僕の流ちょうなスペイン語を聞き取れなかったんだと思い、紙の中にあった「moto」の名前をみつけ、これこれ・僕僕と指をさしてアピールする。

 えぇ本当か、ウソじゃないだろうな?という顔を一瞬うかべながら、しっしっとわんこを追い払うような仕草で僕は解放された。

 翌朝、9:30の集合ぴったりにフロントに降りていくと、主催者のスタッフが
「おはようございます。今、中田がチェックアウトしていったんですよ」 と教えてくれた。
 そこで合点した。あの警備員のおじさんは、きっと中田英寿のサインが欲しかったのだろう。いや試合から戻ってくるすべての選手にサインをもらおうと狙っていて、東洋人だから「お、中田ゲット」と思ったのかも知れない。

 知らないと言うことは、恐ろしい

 中田を見れなくて惜しかったなぁと思っているところに、背の高い欧米人が現れて、ロビーで張り込んでいた日本人女性2人が「ぎゃー」とは言わなかったが、一目散に後を追った。当然だが、サッカーに興味がない僕は 遠巻きにみていた。

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