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2006年4月 9日 (日)

最後までペンを走らせる男

 バスから選手が降りてくる。今日は先頭はライカールトではない。デコもなかなかこない。と思っていたら、列からちょっと遠目をデコが歩いていく。
 Tenga! Deco!
 僕は一生懸命、スペイン語で叫んだというのはウソで
 「デコ、プレゼントおぅ」
 もう恥も外聞もない。するとその気迫に気圧されたのか、デコがちかづいてくる。スローモーションのようにデコの右手が伸びる。なにか既に手に持っているぞ。めいっぱい受け取りやすいように広げておいた取っ手をデコが掴む。

 さて、デコが過ぎてからは、ラーションやシャビに詰め寄るファンで支柱が倒れそうになるのを必死で支える。
 仲間の一人の女性が、その献身的な行いを「えらい!」と誉めてくれる。

 ずいぶん前、友達につきあってジャッキー・チェンのホテル待ちをしたことがあった。
 もう何時間もジャッキーの到着を固唾を飲んで待つ。皆、ホテルに迷惑をかけぬよう整然と並んでいる。
 後からやってきたファンが、さらにホテルの外まで列を伸ばす。
 ジャッキーが着いた。
 すると、その後からきたファンが、絶叫しながらジャッキーに詰め寄ったために、ガードマンが脇を固めてしまい、数時間待っていたファンは握手さえ許されなかった。
 あの時はがっかりする友だちを思うと心底腹が立った。

 一通り選手はホテルへ入ってしまい、人それぞれの充足感、不満が入り交じっていた時、ある一角にいたのは、最後までペンを走らせる人ライカールト。
 にこりとするわけでもなく淡々とだが、しっかりと時間のかかるフルサインを書いていく。翌日試合を控えた選手の分まで僕が書こうという気持ちに泣けてくる。
 何度もムーチャスグラシアスと声を掛けた。
 ここがホテル前じゃなかったら、フランクコールさえ起きただろう。
 僕はデコ以外にサインをもらうつもりはなく、何も用意していなかったが、サインの列に並んでいた。
 僕の前にライカールトがやってくる。

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