そばアレルギーの症状
大人になって初めて、恐る恐る食べるそば
最初の一すすりは何事もないかのように思えた。だが、
食べ進むに連れ、じわじわと体温が上がっていくのがわかる。
なんとか半分くらいまで食べ、格好が付いたところで箸を置いた。
当時はまだ「そばアレルギー」という言葉も知らない。ちょっとお腹いっぱいなのでと言い訳する。
症状は30分もせずに現れた。
取引先を辞し、高速道路、クルマを走らせていると、頭皮から爪先まで猛烈なかゆみが襲う。
1時間近く片手ハンドルで全身をかき続け、ようやく会社にたどり着く。
21時を回っていたが、上司がまだ事務所に残っていた。
「おまえ、酒呑んで運転してきたのか?」
いきなり、上司が怒鳴る。
夕飯の席に酒は出ていない。
え、なんでですか?
鏡見てみろ!と上司
洗面所の鏡の前に立つと、まさに"ゆでたタコはこんな色をしている"という顔色が映った。
「小学生が給食のそばで亡くなった」
その記事を新聞に見つけたのは、その数年後
その時、初めて「そばアレルギー」の存在を知った。
その時の感情は、かつて、花粉症の人、パニック障害の人が言われない不調に悩み、その病気の定義に出会った時の不思議な安心感に似ているかも知れない。
その時切り抜いた記事は、ずいぶんと黄ばんだが今もクリアファイルに大切にとってある。
当時は、事あるごとにその切抜きを持ち出しては「そばアレルギー」ネタを話して回った。
世間がそばアレルギーを認知したのは1990年代。
すかいらーくのメニューでワッフルに「そば粉を使用しています」という記述をみた時は嬉しかった。食品アレルギー表示の義務化はまだ随分先のことであり、この会社は先進的だった。
そんな時、後に僕の十八番のお笑いネタとなる、その出来事はおこった。
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