川原の石
まとめながら、話し合いを否定していく森さん。
見回すと、メンバーの表情に戸惑いの色がみえる。
ここでリーダーの僕が調整に出るべきなのか?
それまで、ほとんど発言のなかった渡辺さんが切り出した。
「後から 勝手に変えていくんじゃ、話し合った意味がないよ」
皆も追随する。
日頃、会社内では思っていても言えないことが多い。
だが、ここにいるメンバーはお互いにしがらみがなく後腐れもない。
ここでは、言いたいことを言えるんだ!
そういう解放感が皆の心に芽生える。
今日も昨日に続いて「指名発言」は求めなかった。
しかし、共同作業を仕切って行くには、自分の能力不足を痛感せざるを得ない。
夕涼み~
とりまとめで疲れていたので独りになりたかったが、思い直して
皆を誘いビールを買ってデッキに出る。
大海原で夕風に吹かれると、先ほどの険悪な雰囲気はもうどこに
もなく、夕日が沈むまでの一時を皆、幸せな気分で過ごす。
事務所という建物を使わず、川原の石に座って話し合えば、僕ら
の会社という枠組みはもっと、うまくいくかも知れない。
夕食はコース料理。飯塚さんはワインを3杯も呑んで20時には
寝てしまった。明日もきっと早く起きるのだろうと思うと気が重い。
同じ会社から来た山田が「新聞サークル」に誘ってくれたので
二つ返事で入る。
新聞記者になるのが子どもの頃の夢だった。
中学まではいつもクラスでは新聞係りだった。
新聞社という枠組みには入れなかったが、子どもの頃にはなかっ
たインターネットというものができて、今は生涯学習のWebサイト
を作っている。
船内テレビでは、香港上陸活動時の説明会が中継されている。
ベッドに寝転がり、それに見入っていると、山田が過去の船上新
聞のコピーを持ってきた。
この「洋上研修」では「新聞サークル」が船上のできごとを新聞
にまとめ、1回だけ発行するのが慣例になっているらしい。
翌日の第一回「新聞サークル」のミーティングに備え、過去分の
コピーとにらめっこしながらアイデアをまとめておいた。
この時、これが山田との最初で最後の共同創作になるとは思いも
しなかった。
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