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2006年7月25日 (火)

船旅の終わり

 着岸を見届けると部屋に戻り、下船OKの放送を待つ。

 下船OKが出た。
 重いスーツケースを抱えて階段を上り、事務局の見送りでいよい
よ船を下りる。
 タラップには事務局スタッフが一列に並んでいる。
 新聞取材ですっかり顔なじみになったスタッフが「motoさ~ん」
と、ビートたけしの「冗談じゃないよ」と同じ動きで手を振って
いる。そこで立ち止まり、握手を交わす。
 これだけ仲良くなったとはいえ、今後の人生で再会を果たすこと
はないだろう。一瞬見つめあう間があったが、互いに再会を誓う
言葉は口にしなかった。
 「お元気で」

 二週間ぶりに、日本の地を踏む。
 入管は係官が「何も買ってないでしょ?」と書類を受け取っただ
けで、ほとんどスルーパス。

 宅急便デスクから自宅に荷物を送り、渡辺さんはそこで別れる。
飯塚さんはしばらく船から出てこなかったので挨拶できず。

 東京駅八重洲口行きの臨時バスが出ている。
 仕舞いこんでいた携帯電話を取り出し、JRエクスプレスカード
窓口に電話をかけて、森さんと二人分の「のぞみ」を予約。

 東京駅で平島さんと別れ、改札で芦田さんと別れる。
 久々に日本のスポーツ新聞を買って「のぞみ」に乗り込む。

 新幹線 いつもの楽しみであるホットコーヒーを買い、しばらくは
スポーツ新聞を広げたり、森さんと話をしていたが、森さんが眠り
につく。
 名古屋まで96分の電車の旅は、13日間の船旅の後のせいか、
あっと言う間に感じた。

 この頃はまだ、パソコン通信としてのメールだけの時代。
 洋上の仲間達とは、その後、何度か年賀状をやりとりしたが、
それも数年で途絶えた。

 船上ではゆったりと時間が過ぎていたせいか、日常的な時間の流
れが短く感じる。
 しばらくはこの時間感覚に浸っていたい気もする。

 長い旅を終えた。
 この間、小さいことにこだわらず、人のことに腹を立てず、常に
前へ出て、参加し、引っ張り、話しかけ・・・
 そういうことを迷わずにできたことに自信を持った。

 この気持ちを日常の中で持ち続けていくことが、これからの課題。
 簡単なことのようだが、これが難しい。
 ただ、何をすればよいのかが、単純明快になったことが大きな
収穫だった。

(洋上研修 連載 おわり)



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