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2006年9月26日 (火)

夏休み、おじいちゃんの家で

 夏休み、おじいちゃんの家で高校野球を見ていた。

 おじいちゃんの家は酒屋をしている。
 店先ではタバコを売っていて、時々、僕も店番をする。ハイライトが80円でチェリーは90円・・おばあちゃんから習って暗記していた。
 生涯を通じてタバコを吸ったことはないが、この時に嗅いだ「しんせい」「わかば」の箱から漂う香りは素敵だったと今も思い出す。

 その日はおじいちゃんが タバコ前の指定席で新聞を読んでいる。
 角打ちのカウンターがある広い酒屋の方から 誰かが入ってきた。

 「おじいちゃん、元気?」

 確か、そんな言葉だったと思う。もしかしたら ●●さん という呼びかけだったかも知れない。客人は親戚に話しかけるような気軽さで、おじいちゃんに話しかける。おじいちゃんの反応は特段大げさでもなく、おぉ君かというところ。

 テレビでは数日後、延長18回を戦う三沢高校の大田が投げていた。と思う
 客人はどれくらい、そこにいたのだろう。
 立ち話だったか、ちょっと腰掛けたかも見ていない。
 一人だったのか、連れがいたかもわからない。

 大田がピンチを防いで攻守交替となった。
 振り返るともう客人がいない。
 おじいちゃんは新聞を読んでいる。台所にいたおばあちゃんに尋ねる。さっきの誰?

「あぁ、安倍晋太郎だよ」

 小学生の僕でもその名前は知っていた。選挙が始まれば、片道2.3kmの通学路の退屈しのぎに選挙掲示板はうってつけ。すべての候補者名と政党を暗記していた。

 確か、自民党だよね
 そうそう

 4人いるおじいちゃん、おばあちゃんのうち、酒屋のおじいちゃんはただ一人怖い存在だった。

 「これで、アイスこぉといで」と10円を握らせてくれたのはいつもおばあちゃんの方。おじいちゃんは、いつもしかめっ面でほとんど口をきかなかった。いつも新聞を読んでいた記憶がある。

 一番早く亡くなったのがこのおじいちゃん。交通事故だった。知らせを受けて母が風呂で泣いていたのを思い出す。
 葬式には市長が来て弔辞を読んだ。生まれて初めての葬式だったが、子どもの僕にも寺を取り囲んだ壮絶な数の黒服弔問客で、おじいちゃんが すごい人だったことがわかった。

 僕はまだ現役の総理大臣をこの目で見たことがない。
 衆議院に行った時は、会えるかも知れないと思ったが、すべての委員会にいちいち首相が出てくるわけではないことを後で知った。新しい首相には一度、冥土の土産に会っておきたい。そして、いつかこう報告しなければ。
 「あの息子が、父ちゃんの遺志を継いだよ」

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