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2006年10月19日 (木)

皇室の本を売る営業

 僕はあるとき皇室の本を売る営業だった。
 数万円する豪華本は堅調に売れていた。
 僕自身は美術に造詣はなく、皇室の知識も皆無。
 なので、興味がある人が買っていくというだけだった。

 ある時、1万円を切る価格での廉価版を出すことになった。
 こればかりはある程度、数を売らなければ建て部数がはけない。

 馴染みの書店の社長に相談すると
「生長の家なら買ってくれるっちゃないと?」
 という。僕はその組織の名前しか聞いたことが無かったが、その総本山が担当していた長崎県にあるのだという。

 今ならば、図書館で10冊や20冊は文献を紐解いてから臨むところだが、何せその頃は読書の習慣がない。何かをしらべるならば本を読む。この当たり前のことを当時は気づかなかった。

 生長の家に営業に行くと言うと、先輩がこれを持って行けと言ってロッカーからごそごそと何やら出して渡してくれた。

 件の社長がアポイントをとり、社長と二人で訪問した。
 本は発売前だったが、理由を言って出来たての一冊を送ってもらった。

 部屋に通される。先方は三人ほどの方が応対してくださった。皆さん、初対面にも関わらず、にこやかだったのを覚えている。

 いよいよ本の紹介にはいる。緊張の一瞬
 僕は、両手で大事に抱えてきた紫の風呂敷包みを、ゆっくりとテーブルに置く。そこでスボンの右ポケットから白い手袋を出してはめる(軍手ではない)
 風呂敷の紐を解き、白手袋の手で本を相手に示し

「こちらになります」
 と言ったかどうか、後はほとんど覚えていない。
 職域で本を売る時は「回覧」という方法をとる。実物に「帯」を巻き、その帯の指名記入欄に買いたい人は名前を書く。
 後日、回覧本を回収に行く。

 販売冊数はまずまずのものだった。絹の白手袋は、今も後輩へと引き継がれているだろうか。

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