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2007年5月16日 (水)

ルールの下のスポーツ

 係員に食い下がっている40歳前後の男性ランナー。
 「我々は言われたとおりのルールでやってますから」
 なだめる係員。

 「判定に不服を述べるのは常に敗者」
 これはFCバルセロナ、ライカールト監督の言葉。

 スポーツはルールの元で行うもの。
 マラソン競技はグロスタイムでおこなう。
 どれだけスタート時点でロスタイムがあろうが、途中関門や完走の制限は号砲からの時間で計測される。全国どこの大会でもそうだ。
 個人の参考記録としてのみ、ロスタイムを差し引いたネットタイムが存在する。
 事前に説明があろうが無かろうが、知らなかったのは自らに非がある。

 テレビカメラが取材している。
 「コースはどうでしたか?」
 「走りやすかったです」
 50歳前後の男性が答えている。途中で止められたランナーの取材にしては、呑気ですべった質問だ。

 連れの男性に抱きかかえられて泣き崩れている女性を、カメラがなめるように撮っている。この絵こそ、彼らメディアが求めているもの。きっとこちらは放送で使われるだろう。僕は背を向けてその場を離れた。

 止まってみて息も切れていない。マラソンをゴールした直後のランナーが平気な顔をして優勝インタビューに答えているのを見て「アスリートは鍛え方が違うな」と思ったことがあった。そして、今自分が30km走ってきて息も切れていない。マラソンは不思議なスポーツだ。

 「チップとゼッケンを1枚回収します。もう1枚は荷物の引き替えに必要です」
 皆が係りの指示に従う。
 あとでわかるのだが、完走賞のTシャツはチップとの引き替え。
 ここでチップを渡してしまうので、ゴール地点ではTシャツを受け取ることができないという段取りになっているのだった。

 右足につけたRCチップを外し段ボール箱に入れる。
 「会場に移動してください」
 声に従い路地を行くと、道路から奥まった広場があり、そこにランナーを収容する大型バスが待っていた。

 バスの横にはテーブルが置いてあり、スポーツドリンクのペットボトルと紙コップが並んでいる。
 手酌で最後の給水。
 第三関門リタイア組、2台めのバスに乗り込む。なんの気なしに左側の窓際に座ったのだが、後で思えばこれがよかった。



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