練習が餃子に替わった日
廊下の蛍光灯が消えた。
息を呑んで次の展開を待つファンクラブメンバー。
一斉にスタジアムに煌煌と明かりがともるかとイメージした次の瞬間
意外にも入り口のドアが開いた。
たった一人、スタジアムの職員らしき人が肩から鞄をかけて出てきた。
お、これから準備を始めるのか?
と思った次の瞬間、彼は180度振り返ると、ポケットから鍵を取り出して施錠。
「さぁ今晩のおかずは何かな」
と今にも言い出しそうな、ごく自然な表情でそのまま帰ろうとした。
施錠したということは、もう館内には誰も残っていないのだろう。
ここで彼を行かせてしまったら、情報源がない。
「あの、今日バルサ、練習ですよね?」
JR東海の「そうだ 京都行こう」に匹敵するシンプルな言葉が口をついて出た。
スタジアム職員ショウジさん(仮名)の表情は曇った。
「え、そんなこと誰に聞いたんですか?」
いや、あのFCバルセロナの公式サイトに載っているんですけど・・
まるで悪いことでもしたような気分で、しどろもどろになる僕たち。
ショウジさん続ける。
「そんなの聞いてないし、今日はなにも予定入ってませんよ。こうして僕も帰るところだし」
自分の意見がないので、人につっこまれるとすぐ「おっしゃるとおり」を3回連呼する「おっしゃるとおり病」の同僚がいる。その見事な巻き舌にはいつも感服しているが、今日は僕がその絶妙の巻き舌を披露してしまった。
あっけにとられてショウジさんを見送る僕たち。
後からバルサのファンに聞くと、訳知り顔で「そんなことは日常茶飯事だよ」と鼻で笑われてしまった。
途方に暮れる僕らと同様、もう一組僕らのご同輩がいたので話しかけた。
「きょう、バルサの練習はいってないらしいですよ」
「え、まじすか?」
結果的には、この出会いが縁でこの時点では誰も知らない情報を得ることになった。
それはオフレコでと頼まれているので、その場にいたデコファンの心だけに留まっている。
僕らは急遽予定を変更して、美味しい餃子の店に繰り出した。
人生には変わり身の早さが必要なときもある。
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