バスでめざす江ノ島
リタイア組を乗せたバスが走り出した。
何台のバスがここで待機していたのかはわからない。
まだ路上には多くのランナーがバスを待っていた。
出走者数6,596人、完走者数:5,920人(89.8%)と発表されているので、リタイアしたランナーは676人。第一関門、第二関門それぞれで止められた数はわからないが、ここには400人ほどがいたのだろう。
さっきまで何度も抜きつ抜かれつを繰り返していたランナーの姿もみえる。
バスはマラソンコースである国道に乗り入れ、ゴールに向かって走り始める。
「穴があったら入りたい気分」という言葉は知っていたが、なかなかそれを実体験する機会はない。貴重なことだ。
今はただ、エンジンの力を借りて、ランナーよりも早くゴールに着くことに気が引けている。
バスはどこからか国道を外れてわき道に逸れ、江ノ島を目指すのだろう。
ぼう然と車窓の景色に目をやっているうち、しばらくすると最後尾のランナーに追いついた。
見るからにへとへとになった走りだ。
見ていて痛々しい。
だが、僕らはその彼らよりも、さらにずっと後ろにいたランナーなのだ。
自分たちの数分後の姿を俯瞰しているようで、不思議な気持ちになる。
バスは一向に全速力に移行しない。
どうやら、バスはランナーの後ろを着いて行くらしい。
これには安堵した。
これならば、5時間40分のゴールが閉まり、ひっそりした頃、江ノ島に帰ることができる。
時折、併走する車線にワゴン車が現れる。
交通規制は解除されていないので、今この国道を走っているのは大会の関係車両のみ。第四関門以降の棄権者を収容するための車だ。
第三関門さえクリアしていれば、第四関門では止められることはない。完走扱いにはならないが、そこから先、歩道を走れば制限時間は10時間となる。第三関門までの制限時間設定が厳しい割には、そこから先が極端に緩くなる。なんだかよくわからないレギュレーションだ。
あと3分早く第3関門にたどり着けば、記録の扱いはどうであれ、こうしてバスに乗ることなく自分の足でゴールを目指すことができた。この3分は悔やんでも悔やみきれない。
ただゆったりと進むバスに小一時間も揺られているうちに、気持ちはずいぶんと落ち着いてきていた。
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