第三関門
30kmのエイドを出るとすぐ折り返しの湘南大橋。後がないここで、この上りはきつい。
いよいよやばいというところでかかったのは、さだまさし「案山子」
去年の紅白を見ていて、この曲で郷里の母を思い出して頑張ろうと思った。だが、このタイミングに入れたのは間違いだった。
正直いってもっとアップテンポな曲がほしかった。
ひたすら全力で走る。
31kmの看板を過ぎて時計をみた。13:01あと2分を切っている。
あと300mを2分。いや1分30秒くらいか。
まだいける。
ガソリンスタンドが前方に見えている。道はなだらかに右にカーブしていて、その先は見通せない。いくら走っても関門が見えてこない。
ZARDの「負けないで」が鳴っているのはわかった。去年もっとも励まされた曲。今は全力疾走に入っている。そして、ここからバスに乗るまで、どの曲のことも覚えていない
もう随分長い距離を走った気がした。
すると、はるか前方に人らしき姿がぼんやりと見えてきた。
もしかして、ダメなのか。
だんだんと人溜まりは大きくなり、それが堰き止められたランナーであることが僕にも理解できた。
時計を見た。13:06
もう制限時間を3分も過ぎている。
300mを5分かかったのか?
それはあり得ない。
キツネにつままれた感覚。
パイロンの先の道にもう走っているランナーはいない。
僕だけが例外で前に進めるわけもない。
ペースをジョギングに戻し、そして走るのを止めた。
第三関門通過者で、第四関門を通過できなかった場合、31.3km以降の公認コース外コース(歩道のこと)を行けば制限時間は10時間というルールがある。完走扱いにはならないが、第三関門さえ抜ければ、誰にも止められることなく自分の足で江ノ島へ帰れるのだ。
「スタートのロスタイムがあったじゃないか」
「こんなの絶対おかしい」
男性の怒鳴り声が聞こえてきた
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