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2007年6月 3日 (日)

なにかに怒るデコ

 試合前日の練習は、ファンにはもちろん非公開。
 警備は厳重で、バスを乗り降りする選手とファンの間には10mほどの緩衝エリアが設けられた。
 なにもそこまでやることはないだろう・・
 僕らは罪のない競技場係員に聞こえないようにぶーたれる。

 練習が終るのを待つ間の2時間。
 始めはまばらだった野次馬が3倍に増えた。
 携帯電話の情報力だ。

 僕らはスタジアムをぐるっと一周して、どこからかピッチが覗けないかを模索した。ようやく、絶好のポイントを見つけたところですぐ係員がやってきて注意された。

 練習帰りは、最初に引き上げてきてバスに乗った選手は居残り組みを待たされる。
 名前のわからぬ若手選手やライカールトは早くに乗り込んで、こちらを見ている。
 でこすけのイラストを見て指をさして笑っているのはモッタか。

 僕らはバルサコールや選手名をコールして、誰か一人でもファンの前にやってきてくれるのを待った。
 僕は先日のテレビ取材の時に備えて暗記した「Can't del Barca!」通称イムノを歌う。 誰もついて歌えなくて、僕一人で歌う。
 バスの中にいる選手にその声が届いただろうか。

 ロナウジーニョは居残りシュート練習をしたのか、最後の方にバスに乗り込んだ。
 ロニーコールに応えて、手を振ってくれた。

 そして、しんがりがデコ
 しかしデコは視線を落とし、まるで怒っているかのように険しい顔でバスに乗り込み、その後も窓の外を見てはくれなかった。

 デコがその次に笑うのを見たのは、試合後、敗れながらのMVPに失笑しながらテレビ出演したときだった。
 デコは怒るとモノを投げる。
 つい先日もスペインでの不甲斐ない敗戦後、フルーツを投げたらしい。
 これで熊本県の登録商標「でこぽん」のCM出演が難しくなったかも知れない。

 この決勝の後はベンチに向かってペットボトルを投げた。
 そこまでデコはずっと怒っていた。
 何に怒っていたか、想像でモノを言うことはできても、本当のことはデコに聞いて見なければわからない。

 バルサファンの少年が泣き、選手はうつむいてバルサ日本の旅は終った。

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