スペインへ渡ったのは
ファンクラブ仲間が8時間の丸坊主を体験した日、ホテル前の行列の先頭にデコ20のユニを着た少年がいた。親御さんと一緒だったと思う。
僕は列に並んでいるわけでもなかったので、その少年の元へ歩み寄り勧誘した。
「デコファンクラブというのがあるんだけど、よかったらお父さんに言って入ってね」
少年は迷惑そうな顔をしていた。
その少年は後で思えば、決勝翌日にムンドデポルティーボの一面を飾った号泣少年と、どことなく似ていた。
その少年には、会長ジョアン・ラポルタのツルの一声で捜索令状が出された。
デコファンクラブのウェブサイトにも、ある放送局からメールが入った。
「この少年をFCバルセロナが探しています。情報があったらお寄せください」
少年は1日とかからず探し出されて、春休みにはカンプノウに招待されて、ロナウジーニョやデコと会った。
ひと泣きでスペインに渡る少年あれば、長年追いかけてもサインひとつもらえないファンもいる。
そして僕は後者の道が好きだ。
時に悲しみ、時に喜び、いつの日かデコを囲んで話をしたい。
そう思っていることが楽しい。
バルサの敗戦後、ファンクラブはデコに二度目のエアメールを送った。
皆が思い思いにデコを激励する言葉に頭をひねった。
翻訳班が皆の思いを、辞書を片手にポルトガル語(=ブラジル語)に翻訳。
そして郵便班がデコへ送り、便箋2枚の封書がスペインへ渡った。
心を一つにした仲間の存在は、どんな特別待遇や美味しい思いにも勝る。
バルサが負けて離れて行く人もいる。そこで残ったメンバーにはさらに次への絆が生まれる。
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