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2007年8月10日 (金)

ピアノマン元春

 都久志会館の夜。音は驚くほど大きかったが、その心地よさに酔った。
 中でも驚いたのは「二人のバースデー」のピアノ。
 コンサートのピアノはこんなに素敵な音なのか。この日、ギターよりも、サックスよりも、僕はこのピアノの音にしびれた。

 デビュー間もないこの頃、元春はステージで「ギターマン」と「ピアノマン」の顔を使い分けていた。
 「小川洋子対話集」(幻冬舎 2007年1月刊)によるとこの頃は「あんなこともできる、こんなこともできる」というところを見せたかったのだという。
 さっきまで、ギターを抱えて飛び跳ねていたロックンローラーが、スローな曲では突然椅子に座り、ピアノを奏でる。その優雅な変わり身にすっかり参ってしまった。

 ファンは相変わらず全員が座ったままだが、2枚のアルバムで慣れ親しんだ曲が続くに連れて、コンサート会場は親戚の甥っ子の里帰りコンサートのような、アットホームな空気に包まれ始めていた。

 ピアノマン元春が「Do what you like」のイントロを弾き始める。
 すると3秒で元春が指を止めた。
 いったい、なにが起きたのか?
 皆が固唾を呑んだ瞬間、彼は神妙な顔つきで、元春と聴衆の線をさえぎっていたポカリスェットのボトルを掴み、30cm脇に置きなおした。
 僕の顔が見えないだろ?
 とばかりに、にっこり笑う元春。
 ファンはどっと笑い、暖かい笑顔に包まれた。

 そして、このピアノマン元春に奇跡の時間帯が訪れる。



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