ピアノマン元春
都久志会館の夜。音は驚くほど大きかったが、その心地よさに酔った。
中でも驚いたのは「二人のバースデー」のピアノ。
コンサートのピアノはこんなに素敵な音なのか。この日、ギターよりも、サックスよりも、僕はこのピアノの音にしびれた。
デビュー間もないこの頃、元春はステージで「ギターマン」と「ピアノマン」の顔を使い分けていた。
「小川洋子対話集」(幻冬舎 2007年1月刊)によるとこの頃は「あんなこともできる、こんなこともできる」というところを見せたかったのだという。
さっきまで、ギターを抱えて飛び跳ねていたロックンローラーが、スローな曲では突然椅子に座り、ピアノを奏でる。その優雅な変わり身にすっかり参ってしまった。
ファンは相変わらず全員が座ったままだが、2枚のアルバムで慣れ親しんだ曲が続くに連れて、コンサート会場は親戚の甥っ子の里帰りコンサートのような、アットホームな空気に包まれ始めていた。
ピアノマン元春が「Do what you like」のイントロを弾き始める。
すると3秒で元春が指を止めた。
いったい、なにが起きたのか?
皆が固唾を呑んだ瞬間、彼は神妙な顔つきで、元春と聴衆の線をさえぎっていたポカリスェットのボトルを掴み、30cm脇に置きなおした。
僕の顔が見えないだろ?
とばかりに、にっこり笑う元春。
ファンはどっと笑い、暖かい笑顔に包まれた。
そして、このピアノマン元春に奇跡の時間帯が訪れる。
Welcome to the HEARTLAND TOUR 「東から来た男」もくじ
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