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2007年8月20日 (月)

小欲知足

 支社長の怒鳴り声にお昼時の平穏な空気は破られた。
 「コレを見てみろ」
 弁当の蓋をあけて中身を示す。
 そこには、そぼろで彩られた三色弁当の姿があった。

 三段弁当→三色弁当
 この期に及んで、なぜこんなことを間違うのか。

 「すぐ連絡を取れ」
 当時誰よりも早く入手していた携帯電話で名古屋に電話を入れる。
 「三段弁当じゃなくて三段弁当だったんだけど」
 「・・・・」
 それがどうしたんですかと言わんばかりに黙り込む担当者。
 「支社長が怒っていて、なんとかしろって言ってるんだ」
 「どうしたらいいんですか?」
 三段でも三色でも、無償で提供を受けた昼食にけちをつけるのははしたない。 こんな交渉はしたくはないが、その場の空気は凍り付いている。
 結局、そのレストランでの追加注文をすべて旅行代理店が負担するということで電話を切った。

 「なんでも追加注文していいそうです」
 そう言うと支社長は溜飲を下げ、おばさん達は色めき立った。食べ始めていた三色弁当の蓋を閉じて、カフェテリア方式のメニューを次々にテーブルに運び始める。

 幹事は6人のチームで引き受けていて、男女3人ずつ。だが実質は僕一人がすべてを仕切っているようなもの。
 幹事チームのおばさんは
 「幹事だったから出遅れてメロンがなくなった」
 と僕にクレームを付けている。

 北海道の旅は財布持ちの旅。
 「夕張ソフト」の看板があれば
 「幹事~」
 「ラベンダーアイス」の垂れ幕が有れば
 「幹事~」
 行く先々で甘い物を発見する度、幹事が呼ばれてお金を払う。
 寿司屋に行けば、いくら丼は出ないのか、ウニ丼はないのか?
 いざ用意できるとなれば「両方食べたい」
 結局全員がひとしきり寿司を平らげたうえ、うにいくら丼を注文する。

 夕張メロンの小売店に行けば、交渉の達人が出てきて
 「40個買うから6000円を4000円にしろ」
 とやっている。

 自分が安く済ませることは、他人が生業を削ること。
 人の金を当てにするものは、人生を捨てるようなもの。

 この旅で撮った写真では、僕は一度も笑っていない。
 この旅を通してもっとも手を焼いた人たちはいずれもその後、悲惨な人生を送ったり、若くして人生を終えている。

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