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2007年8月17日 (金)

旅行代理店さんとの交渉

 ある時僕は名古屋支店にいて、慰安旅行の幹事だった。
 ほかの支店では経験がないのだが、名古屋での幹事経験はそれは大変有意義なものだった。

 他の支店にいた時、旅行参加者は幹事には敬意を払っていた。
 同額の旅費を自腹で払って参加しているのに、片やあれこれと他人の世話まで焼かなければいけない幹事に対しては、暖かい視線とねぎらいの言葉が付きものだった。
 だが、名古屋はそうではなかった。

 幹事は旅行参加者の下部、いやもっと差別的な名詞がふさわしい扱いだった。
 まず幹事は立派な「旅の小冊子」を作らなければならない。
 小学生じゃないんだから、自分が行く場所くらい自分で「るるぶ」でも買うか、図書館で調べたほうがはるかに楽しいと思う。
 などと言ったら幹事失格どころか人間失格の烙印を押されるので、口に出しては言えない。

 この旅の滑り出しはとても肝心で、"下部となって働きます"という意思表示があるか無いかで、旅の難易度は大きく左右される。

 ところが不運なことに、日本でも最大手の旅行会社がダブルブッキングで飛行機の予約をしくじったという連絡がはいる。

 ここから苦行が始まった。
 本来の旅程ならば、知床に直接飛ぶところを、その飛行機を抑えていなかったために、千歳に降りて乗り継ぎすることになるという。それによるロスタイムはおよそ3時間。

 本来ならば、降りることのない空港に降りて、しばらく散策できるとあれば、それもまた旅の楽しさだと僕は内心思っていたが、会社の空気は倒産の危機を迎えたかのように緊迫の度合いを高めていた。

 担当者だけでは埒が明かないと言うことで、その大手代理店の課長と担当者が呼びつけられた。
 応対するこちらのスタッフは支社長、幹事の僕、そして自称交渉の達人サトウさん。
 低頭で詫びる二人に対して、支社長は無言のプレゼンスで不快感を示す。
 あぁでもないこうでもないと屁理屈をこねて、何かを引き出そうとするサトウさん。
 しびれを切らしてと言うか、ここが頃合いとみたか相手の課長さんが
「どうすればいいんですか?」
 と泣きを入れる。

 そこで交渉の達人イトウさんが吠えた。
 あ、犬じゃないんだから吠えていません。
 冷静な口調で信じられない言葉を口にした。

(つづく)

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