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2007年8月18日 (土)

悲劇の三段弁当

 イトウさんは、この会社に来る前に別の会社の経験がある人だ。
 彼は脅迫、強要にならぬよう慎重な言い回しでこう切り出した。

「僕もいろいろと旅行の交渉は見てきたけれど、普通こういう場合はキャンセルですよ。そうしたらもうこのツアーは商品価値はないわけで、抑えていた旅館や飛行機がパーにならないためには投げ売りするんですよね。まぁ僕の経験から言って普通ならば半額。今回のケースならば3掛けかな」

 僕は同じ社員としてとても恥ずかしかった。
 自分たちが7割引で旅行に行くために、そこまで言うという下品さに呆れた。 もちろん、無言のプレゼンスを示している支社長への点数稼ぎという側面が大きいのだろう。
 ただカンタンに結論だけ言うと、この人はその数年後、大出世を遂げたかというとむしろその対極の道を歩んでいる。

「3掛けですか・・」
 さすがに詫びる側の課長さんの表情にも不快感があらわになった。
 うつむいたままの担当者。不手際があったとはいえ、よくやってくれている彼が可哀想だという一念で時が過ぎるのを待つ。

 結局、その日の交渉は結論を見ず、後日旅行会社から提示された条件は、元値の7掛けとなる値引き。そして千歳空港での昼食の提供だった。
 担当者が作ってくれた旅程表には、こう書かれていた。

 初日昼食 千歳空港 三段弁当

 これが悲劇の第二章の幕開けとなる。
 幹事の真摯さをアピールするために暑いなかジャケットを着込んで臨んだ旅行初日。旅行会社からの添乗員は契約社員の女性が付いていた。

 僕らは千歳空港のレストランへとたどり着いた。
 テーブルにはすでに弁当がセットされている。だがその弁当の器を見た時に少し違和感があった。
 全員をテーブルに座らせる。

「席は決まっているの?」
 決まってるわけないだろ?ここは学校給食か?とは言わず
 いえ、自由席ですよ。空いているところにお願いします。と感情を殺して応対する。**さんと席が離れたとぶーたれる声が聞こえたその時、

「motoぉっ!」
支社長の怒声が、店内にこだました。

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