仰向いて唾吐くな
子どもの頃、母からよく「仰向いて唾吐くな」と教えられた。
町で唾を吐く人は男性にはたくさんいる。
サッカーや野球選手は、10分に1回唾を吐かなければならないというルールがあるようで、威勢良く唾を吐くシーンがテレビで放映されている。
だが、仰向けになった状態で唾を吐く人は居ない。吐いた唾は自分にかかるからだ。
子どもの頃、試しに仰向けで唾を吐いてみたことがあるが、確かに口や鼻の周りに唾は落ちてきた。
他人に向けて吐いた唾は、必ず自分に戻ってくる。
他人に向けて吐いたつもりでも、それは回り回って自分に降りかかる。
だから、それは仰向けで唾を吐くようなもの。
だから、仰向けで唾を吐くなと昔の人は言ったのだと母が言っていた。
昔の人の母が言う昔の人だから、大昔から人はそう言ってきたということだ。
唾を吐かないと決めると、のど元まで出しかけた唾を飲み込まなければならない。
それは自分でも飲み込みたくもないような痰かも知れない。
決めれば、それを飲めるようになる。
そうすれば、次からもう唾は上がってこない。
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