ロッキングチェアでカレーば
1981年7月からおよそ7年間、福岡市早良区藤崎にロッキングチェアという喫茶店があった。
元寇防塁跡、西南学院大学、修猷館高校がある西新の町。
そのリヤカー通りを西に藤崎に向かって進み、サニー高取店を通り過ぎた先を曲がった路地に、その店はあった。
天神の有名飲食店で修業したというマスターが開いた。
厨房前、ヨコ一列のカウンターにはロッキングチェアが並び、その後方にテーブル席が2つ。
ほとんどの客はカウンターに争うように陣取り、マスターとの会話とコーヒーを楽しむ。
メニューは珈琲中心。食べ物の目玉はホットサンドでスタート。
後にカレーが加わり人気の定番メニューとなった。マスターの創作メニュー「ピザクレープ」は今でも食べたい逸品。いまだどこの店でもこの品は見かけたことがない。
壁面には11枚綴り3,000円の珈琲チケットを立てるボックスがあり、いつもほぼ満杯。
客層はボーイズ&ガールズからお年寄りまで幅広く、世代を越えた客同士のタテのつながりがあった。
仕送り前でコーヒー一杯で何時間も粘る学生(自分)がいれば、年配の大将が「にいちゃんにカレーばやって」とおごってくれた。
自然発生的に、そこで生まれたグループで野球チームを作り、キャンプに行き、バイクで三瀬峠を攻めた。
1988年に閉店。
マスターはその後、春日市紅葉が丘でパスタとお酒も出す店「アベニュー」を開いている。
もうロッキングチェアはないが、厨房のカウンターは昔ながらのスタイル。
もし、この店が東京にあれば、毎日でも通うだろう。
そして、苦学生を見かけたら
「マスター、彼にカレーを」
いや、やっぱり感じが出ない。
「彼にカレーば」
別にギャグにこだわっているのではない。
3年後のブログ→アベニューでカレーば。
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