ボクシングがある
「今日はボクシングがあるね」
朝刊でボクシング世界タイトルマッチの中継を知ると、心が躍った。
テレビは8時までと決まっているので母と交渉に入る。
「先に風呂に入って、宿題も済ませるし、試合開始まではテレビを見ないから、見せて!」
こういうといつもOKを出してくれた。
ボクシングがある日。
1970年代の家庭では、似たような華やいだ空気がお茶の間に流れていたと思う。
あの頃、ボクシングはなぜ特別な存在だったのか。
■当時、日本人が世界を相手に戦い、勝利の可能性がある唯一のスポーツだった。
■格闘技中継はプロレス、キックボクシングがあった。
キックボクシングは週1回。プロレスは週3回ゴールデンタイムに中継があり珍しさに欠けた。
「プロレスは八百長」という評価が根強く、現代のヴァーリ・トゥードと比べると明らかにシナリオを感じさせるものだった。
真剣さでは、キックボクシングも肩を並べていたが、相手が東南アジアの選手に限られていた。
1980年代に半ばショーとしてのプロレスの価値観が認められたこと。
アントニオ猪木が「格闘技路線」というプロレスの新境地を切り開いたこと。
1990年代に入りK-1、PRIDEなど真剣勝負の格闘技が他にも登場したこと。
これらの要因により、ボクシングの価値は色あせた。
「今日はボクシングがあるね」は聴かれなくなった。
1998年以降、ワールドカップという世界を相手に戦う舞台を手に入れたサッカーがこれに代わり
「今日はサッカーがあるね!」
が家族や友人との会話に登場するようになった。
「ボクシングがあるね」の時代は終った。
ボクシングだというだけで、見る人はもういない。
ダウンが一度も無く、手数や効果的パンチといった「印象評価」で勝敗が決まる上品な格闘技はつまらない。
僕が興行主だったら、倒さなければ勝敗が決まらないルールに変える。
僕がすべてを決めてよかったら、殴り合いを見世物にする興行自体をやめる。
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