ちびの話
世の中には犬と猫が好きな人がたくさんいる。
ミクシィを数年やっていて、改めてそれを実感している。
ミクシィでは自分の写真をプロフィール写真にしている人はほとんどいない。
クルマ好きな人が、マイカーの写真を。
サッカー好きな人が、応援している選手の写真を使うように、犬や猫が好きな人は、そこに自分を投影した世界が広がっているのだろう。
それは小学校3年生の頃
越境入学で近所に友達が少なかった僕は、ある夏の午後
住んでいる県営住宅を散歩していたんだ。
一人でね。
その住宅は15棟くらいあって、子どもの足で端っこから端っこまで行くのはけっこうな距離があった。
住宅の東には堤防があって、大きな川が流れている。
川は僕らの住宅の手前で90°右に曲がっていて、水を堤防にぶつけて向きを変えていく。コンクリートになる前は、よく堤防が切れて、住宅は水浸しになったという。
夏になると、子ども達はそこで泳いでいた。
台風の時は水かさが増して、まさに堤防を越えて来そうだった。
いつもその川は「ざーっ」と流れているのだが、そういう日は濁った水が「どぷぷぷ」と流れていて、それは不気味で怖かった。
その堤防に一番近い山田さんの家には一匹の犬がいた。
ちびという名前のね。ちびと言っても体はそこそこに大きかった。
それぞれが一戸建てだし、そもそも当時はペット禁止という時勢ではなかった。
でもその住宅で犬がいたのは山田さん家のちびだけ。
散歩の終着点にちびがいる
その日はとても暑かったんだ。
「暑い時は水を飲んではいけない。また汗が出るから」
と体育の先生が言っていた。
甲子園で「水を飲ませてください」と審判に頼みこんだ投手が、却下されてマウンドに戻されていた。
今とは価値観が180度違う時代だったから、僕は喉がからからになりながらも、水分補給という考えはこれっぽっちもなかった。
山田さん一家は子どもがいなくて老夫婦ふたり。
それとちび。
その日、山田夫妻は朝から出かけていたみたいで
いつも置いてある愛車のカローラがなかった。
車庫の脇がすぐ家の縁側で、そこにちびの小屋がある。
いつも僕がちびと会うのはここ。
犬と散歩するという時代でもなかったので、僕はつながれたちびしか見たことがなかった。
湿度という言葉も知らない。
からからに干からびたような夏の午後。
人気はなく、風鈴の音も聞こえない。
こんな日に、ちびはどうしているだろうか?
明日につづく
| 固定リンク | 0
「ノート」カテゴリの記事
- しらべる22周年(2022.04.20)
- セットプレー守備 革新的な2つのアイデア(2022.04.01)
- しらべる8,000日 しらべるが行く6,000日(2022.02.24)
- 中学生はなぜヨコ一列に並ぶのか?(2022.02.13)
- しらべるが選ぶ2021年の5大ニュース(2021.12.31)