日本の弓道(二)
弓道の団体戦は5人で行われる。
一人8射。合計40射のうち、いくつが的を射たかを競う。
直径36cmの的のど真ん中に当たっても1、一番端っこに当たっても1。
アーチェリーやエアライフルのように中心ほど得点が高いというルールではない。
丸い的の枠は木でできており、矢が木にめり込んでいれば的中と見なすが、木を砕いて的の外に出てしまった場合は外れ。
競技は同じチームの5人が並んで射場に立ち、順番に矢を射る。
ゆえに弓道場は5人がタテに並べる広さがある。
ところが、ジョニー・デップが出てきそうな森の中の小屋では3人がやっとだった。
しかも射場と安土(的があるところの盛り土)は平行線を成しておらず、1番と3番の立ち位置では、的までの距離に1mの誤差があった。
射場から的までの距離は28mだが、いったいどこに立てば正規の距離なのか、果たして1つでも正しい位置はあるのか、それすら怪しい。
弓道は武道だ。
礼に始まり礼に終わる。はず
僕らは神棚に向かいお座なりの二礼二拍手一礼をすると、準備運動もせずに巻藁に向かう。
巻藁(まきわら)は射場の片隅に置いてある藁を束ねた米俵のようなもの。安土の的に向かう前、型のチェックで矢を射る時に使う。
そばには姿見(鏡)が置いてある。巻藁から2mほど離れて立ち、備え付けの矢を射る。距離が近いので、巻藁用の矢には羽根がついていない。
さすがにこの距離で的を外す(藁を外す)人はいないが、それでも課外クラブで教えたど素人の中には外す人がいて、周囲を慌てさせた。
「日本の弓術」
オイゲン・ヘリゲル著 岩波文庫
昭和初期、日本文化を学んでいたドイツ人が、5年間弓術に日本の思想を求めた記録の書。
当時まだ、弓道は弓術と言った。
ヘリゲルは日本に来て3年、日本人の思想は禅宗の影響があると考え、弓術に答えを求めて阿波研造 師範に師事。
初日に巻藁に向かったところは僕らと同じだが、的に向かって矢を放つまでに4年の鍛練を積んでいる。
僕らがそんなことをしたら、一度も試合にも出ぬまま高校生活が終わってしまう。
阿波研造は「弓術はスポーツではない」と言った。
僕らは袴がなかったので学生ズボンで練習にやって来る。基礎体力づくりの腕立て伏せも走り込みもなく、来る日も来る日も矢を打って帰るだけのくり返し。
そんなスポーツと言えるかも怪しい弓道部の僕らに「弓術はスポーツではない」は我が意を得たりの言葉だが、もちろんそういう意味ではない。
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