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2007年12月12日 (水)

ちびの話2

 全国の犬ファンの皆さん、お待たせしました。
ちびの話後編です。

 常夏のハワイみたいに乾燥した暑さ
 ちびは小屋の中で日の光を避けていたんだけど、僕がやってくると、すたすたと力ない足取りで、小屋から出てきてくれた。

 やぁ元気かい?ちび
 なんだかつかれてるじゃないか。

 そうなんだ。
 この暑さでもうへとへとだよ。

 そう言ったちびの脇に置いてあるブリキのお椀がひからびている。
 僕は、そのお椀を見てすべてを悟った。

 ちびは「ん?どうしたの?」ときょとんとしている。

 次の瞬間、僕はブリキのお椀を手にとって走り出したんだ。
 あいにく、庭には水道なんてない。

 でも、堤防の向こうには川が流れている。
 その川の支流の小川がその堤防の手前に流れている。

 僕はブリキいっぱいに、小川のせせらぎをすくい取って
大切に一滴もこぼさないよう、そろりそろりと戻ってきたんだ。

 その時の君を忘れない。
 もう数十年経った今も、思い出して今三度
鳥肌が立ったよ。

 僕の姿を見た ちびは首輪につながれた紐が切れそうになるほど駆け寄って、大きく前足を上げて迎えてくれた。

 それはまるで暴れる馬のようであり、モーターバイクのレースで勝ったバレンティーノ・ロッシのウィリーのようだった。

 まぁそんな面倒な描写を小学生の僕は知らないから
とにかく、わっ、これ? 当たり?
 やっぱり。そうだろ そうだろ、な ちび。

 僕はその1年後、父親の転勤に連れられて、フェリーで本土まで3時間もかかる離島に引っ越した。

 ちびのことを、なぜ今日思い出したんだろう。

 もう犬の寿命からして、とっくに天国にいる頃だよね。
 僕は生涯で犬を飼ったことがないし、これからも飼うつもりはないから、ちびが僕にとって最初で最後の犬の友達だった。

 あの頃、犬語翻訳機があったら、どうだったかな。
 でもきっと僕は買ってもらえなかったな。
 科学と学習だって、毎月は買ってもらえなかったし。
 120円のジャイアントロボのソフビはおこづかいを貯めて買ったから。

 でもそれ、ちびと僕には要らなかったな。
 心通じ合う二人に、言葉は要らない
 

なんつって ^^;)



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