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2008年1月21日 (月)

日本の弓道(十九)

 小学校の頃、住んでいた盆地の町で僕らは毎晩、遅くまでソフトボールで遊んだ。
 その時、一学年上にイケダ君がいた。
 小学生ながら、高校生でも通用しそうな背丈をもつ彼は、左打席に入ると、ピッチャーが投げるすべての球をホームランにした。

 その3年後、漁港の町に転校していた僕にイケダ君が右目を失明したという話が伝わった。
 中学で野球部に入ったイケダ君は、早くもプロのスカウトが見に来るほどの活躍をしていた。
 ところが、ある日近くで素振りをしていた同級生のバットが目に当たったのだという。
 その後、イケダ君に会う機会があった。彼は昔と変わらず泰然自若として、心を乱していないように見えたが、同級生はそれ以来、ずっと嘆き続けていると聞いた。

 世の中には悪気があって人を傷つけてしまう人がいれば、本当に悪気はなかったのに、不幸にして悪い結果を迎える人もいる。
 特に小さい子どもに言うのは酷かも知れないが、それは想像力の欠如に他ならない。

 この次に何が起こるかという予測。
 この行為が引き起こす可能性のある幸不幸。

 あの時、もう少し想像力があれば。
 そう思うときは、いつも後の祭り。
 また、そこから出直すしかない。

 肝心なことは、その経験に学べたかどうか。

 

(明日最終回)

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