日本の弓道(七)
弓道のフォームは八節と呼ばれる基本動作で構成されている。
定位置についてから矢を射終わるまでの8段階の動作それぞれに名前がついている。
第一節 足踏み 定位置に足を決める。
第二節 胴造り 麺作りではない。下腹に力を込めて土台を固める。
第三節 弓構え 「ゆがまえ」と読む。左脇に抱えていた弓を両手で持ち、体の前に構える。
第四節 打ち起し 弓を両手で上に上げる。この時はまだ引いていない。
第五節 引き分け 左手で弓を支え、右手で弦をいっぱいまで引く。この動作の途中には大三(だいさん)というステップがある。正面に打ち起こした弓を平行を保ち的に向かって移動させる。この時右手は若干、弦を引いている。大三をしっかり停める型、ほとんど停めない型があるが、僕らは大三をしっかり停めるほうを習った。
第六節 会 いっぱいに弦を引いた状態。
第七節 離れ 弦を握っている右手を開く(矢が飛び出す)
第八節 残心 矢を射終えて、両手がまっすぐ左右に伸びた状態。このポーズを何秒保持しなければ減点とか、そういうルールはない。弓道では昇段試験は八節の内容を問われるが、競技では的に中った結果だけが問われる。
「弓を引く」と言うが、実際に引いているのは弦である。
弦をいっぱいにひいた時、右手の位置は的から見て、右耳にほぼ重なる。
その右手を離すのだから、物理的には一定の確率で弦が耳に当たる。
だが、そこには矢が番えられているため、弦は右耳をかすめて外側を遠回りする。
弓を支える左手の力が弱いと、弦が耳をかすめる。
女性は弦の通り道に胸が突起しているため、上級者を除いては、胸当てをつける。
フォームが悪い時は、よく耳に当たった。
冬場は耳がかじかんでいるので、当たるとたまらなく痛い。
そんな時は鉢巻きを耳に引っかけて巻き、的に向かった。
矢をつがえないで八節の動作を練習することを素引きという。
素引きでは矢がないので、弦を引いた手を離そうものなら、弦は耳どころか顔面を直撃する。
素引きでは弦をいっぱいに引く「引き分け」の動作を終え「会」に入ったところで、弦を握った右手を開かず、初期の位置に戻さなければいけない。
その日、ジョニー・デップの小屋を出て、体育館の裏にいた。
そこは、不良が善良な生徒を呼び出すのに好適そうな場所。人通りはなく、誰から見られることもない。
その進学校は荒れた学校ではないので、もちろんそういうよからぬ用途には使われていない。
僕は一人、誰から見られることもなく、八節の素引きを繰り返していた。
つづく
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