私もファックするから
僕はまだ会社に入りたての頃で、いわゆる初な年頃。
美人の人妻にファックしてと言われるのは、かなり心臓に負担がかかりました。
人妻の彼女とは仕事上のパートナー。
月に一度会うだけでした。
日頃は彼女が、その地域の量販店を1人で販促しているのですが、月に一度、僕が出張で現地入りした時に時間を作り、半日ほど一緒に回るのです。
それは「同行」(同伴ではない)と呼ばれるルーチンワーク。
ただ、刺激の少ない地方都市に都会の街から嫁いできたという彼女は、刺激が受けられると思っているのか、大都市にある支社からやってくる僕との月に一度の「同行」をとても楽しみにしてくれていました。
「いつもmoto君と回るのが、とても楽しみなんよ」
そう明け透けに言われると、面食らってしまい、僕は何も言えませんでした。
「同行」の主旨は、販売促進の指導。
最新の商品知識や、他の地域の店舗情報、業界の動向などを僕が店主に説明する。それを横で聞いて、彼女は翌日からの仕事にいかすのです。
営業ですから、説明と同時に注文も取ります。
当時はパソコンやハンディ・ターミナルはもちろん、インターネットもないので、注文書は紙にハンコをもらってくる。
店主も気を遣って、いつもより注文数を増やしてくれたり、棚をごっそりウチに替えてくれたりして、僕の顔を立ててくれるのです。
彼女たちは成果給。こうして同行した時の注文は、他の営業社員も皆、彼女たちセールスレディの実績につけていました。
僕ら営業社員は、その地域の売上に責任を持っているので、誰の実績でもかまわないのです。
そうして実績を付け替えてあげることで、人間関係が親密になるし、また頑張って数字を上げてくれるようになるので、僕らは喜んで、とってきた注文書を渡していました。
注文書は彼女が持って帰り、あとでFAXしたり、急ぎの注文では僕が持ち帰り、後で控えをFAXしてあげたりする。
午前10時頃落ちあって、地域のあちこちの量販店を回る。
そして午後2時頃、ちょっと遅いお昼ご飯を食べて、他愛のない話をして別れる。
そして別れ際、僕が最も恐れるいつもの言葉が出るのです。
「moto君、あとでファックして! 私もファックするから!」
あのぉ、世の中ではそれはファックスなんですけど・・
「ス」を略すな!
純情だった僕は、そのことを結局彼女に言えなかった。
彼女は今も平気で「ファックして」を連呼しているのだろうか?
それがきっかけで、おかしなことになっていないだろうか?
それとも誰かに注意されて、きょとんとした顔で、へぇそうなんだと言っただろうか。
彼女がどこかで、このブログを読んでいないことを祈る。
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