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2008年2月 1日 (金)

走る人の理由

 日本武道館のステージで歌っている佐野元春と、それを聴いている1万人はどちらが楽しいだろうか。

 カンプノウでプレーしているFCバルセロナの選手と、それを観戦している10万人の観衆はどちらが楽しいだろうか。

 王将戦を戦う羽生善治と久保利明の二人と、テレビで棋譜を眺めている将棋ファンはどちらが楽しいだろうか。

 「ALWAYS三丁目の夕日」に出演している薬師丸ひろ子と、映画館で鑑賞している映画ファンはどちらが楽しいだろうか。

 会社のプロジェクトプレゼンをしているプロジェクトマネージャーと、その提案を審議する重役はどちらが楽しいだろうか。

 愚問だ

 やる方が楽しいに決まっている。

 だが、ロックミュージシャンには、なかなかなれない。
 少々カラオケがうまくても、いい曲が書けないし。

 将棋の名人にはなかなかなれない。
 子どもの頃、遊んでないで勉強をしろと言われたから。

 映画俳優にはなかなかなれない。
 見た目が悪いから。

 プロジェクト・マネージャーにはなかなかなれない。
 やる気がないから(笑)


 だが、誰にでもやる側に回るチャンスがある。
 卓球センターに行って、ラケットを借りればよい。
 という話ではない。
 そこには「見る阿呆」がいないから。

 見る阿呆がいる所で、誰もが踊る阿呆になれる。
 それがマラソン。

 あなたは、1年間で何人の人から「頑張れ」と声をかけられますか?
 頑張りたくないから、そんなのは要らないという人も、考えてみてください。

 沿道にいる人が「がんばれ」と言ってくれる。
 選手がまだ寝ているような朝早くから準備して、選手が皆帰ってしまう頃まで後片付けをしてくれるボランティアがたくさんいる。
 ハイタッチをしてくれる人がいる。
 なかには、私設エイドといって、私費で飲み物や食べ物を配る人までいる。

 ふつー、そんな経験ないでしょ。

 だから、42kmが走れるのです。
 日頃10kmしか走っていない人でも、最後は歩いてでも、やはりゴールを目指すのは、別にゴールしたら金の延べ棒がもらえるからではありません。

 脳が「嬉しいじゃん、走ろうよ。前へ行こうよ」
 前へ!前へ!
 と指令を出すからです。

 ただ、練習で走っている時は、そんなことは考えません。
 マラソンには応援が付きものということすら、忘れています。

 それは、マラソン完走という金字塔によって、自分を認められる。
 自分はこれでいい、幸せだ。
 そう思える未来が見えているから。

 レース本番を走っている時も、実はそれほど応援がずっと心に浸みているわけではありません。
 脳が淡々としていないと、長い距離は走れないからです。

 結局、踊る阿呆と見る阿呆、やっぱり踊らにゃそん、そん、孫正義なのです。
なんだそれは



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