社内クレーマーの「お名前いただけますか?」
問合せ電話の最後に必ずこういう人がいる。
「お名前いただけますか?」
"ご指名さん"である。
部署や仕事の機能ではなく、人で仕事をしている人を"ご指名さん"と呼ぶ。
担当制をしいていますから、担当者に受け渡しますので。
受付内容は記録してあり、全員で情報共有していますから。
名前を聞いてどうするのですか?と問うとおおよそ、このような返事が戻ってくる。
「電話したと言うことの確認で」
「自分のメモに書きたいので」
ある時、
「このような有意義なお話をできたことを、誰かにお話できればいいかなと思って」
という男がいた。
気持ち悪いにもほどがある。日常生活全般をこんな調子で暮らしているのだろう。
我々はすべて問合せ内容を記録に残しています。
受け付けたかどうかは信頼していただくしかないです。
それでも指名さんは「でも、お名前いただけますか?」とたたみかけてくる。
さて、ここまでして名前を聞き出した指名さんは、次にどういう行動をするか。
それはいつも同じだ。
「佐藤さんいますか?」
次から、このように電話してくるのである。
ここで、佐藤さんが席にいないとする。すると
「誰か、わかる人いますか?」
とくる。
こういう横柄な言い方をする人には、誰だって関わりたくない。
「佐藤が戻りましたらお電話しますから、電話番号を教えてください」
こうして、指名さんは佐藤さんが戻るまで待たされる。
用件から入れば、そこにいる誰もが答えられるようなことでも、佐藤さんを指名したばかりに、解決が先延ばしになるのだ。
「**部は対応が遅い」
指名さんはそう思っているかも知れない。元凶は自分なのに。
ご指名さんはクレーマー体質なのである。
名前を聞いておくことで、何かの時のために証拠を保全しようという発想をしている。
ものごとには、時と場合というものがある。
消費者とメーカーという関係ならば、お金を払っている側の権利としてそれもいいかも知れない。メーカーの社内は消費者からは見えないので、名前を聞いておけばひと安心という気持ちもわかる。
だが、社内で「お名前いただけますか?」を言うということは「あなたの部署は信頼してないから」と言っているのと同じだ。
同じ会社の社員から「あなたのことは信頼してないからね」と言われたら、どのような気持ちになるかを考えてみればよい。
時と場合をふまえず、誰彼となく「お名前いただけますか?」を言う時点でクレーマー。
クレーマーは自分が強い立場であることを認識している。
「お名前ください」を言った時点で「私のほうが立場、上だから」とも言っているのである。
メーカーのお客様センターの社員にしても、あなたを信頼していると言われるのと、信頼していないと言われるのと、どちらが気持ちよく仕事ができるか。結論は明快だ。
自分が社内クレーマーかどうかを見分ける方法がある。
社内クレーマーは、事業部、コンピューター・システム部署や設備室には「お名前ください」とやっているが、人事部や経理部には言わない。
バックエンド(後方支援)の人はあごで使う。
自身の人事や、金を握っている部署には平身低頭。
そんな二枚舌をつかう社内クレーマーは、信頼を得られない。
どういう人間なのか、人はきちんとみているものだ。
「ご指名さん」はあなたの会社にもきっと実在する。
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