低価法とERPで喜ぶ人とは?
2008年度末、つまり2009年春、今から一年後には日本企業はどえらいことになっている。
平成21年3月期(=2008年4月より始まる1年間の会計年度のこと)より、低価法が適用された。
低価法とは、資産の原価と時価を比較して、低い方を期末資産の評価額とする資産評価基準。
【例】を挙げて説明しよう。
佐藤カンパニーは 5年以上売れないままの商品「スーパー貯金箱」売価2,000円の在庫を、5万個倉庫に抱えていた。この商品の原価は1個 1,000円。
2007年度までの会計では、その原価1,000円で評価できたので、1,000円×5万=5千万円で資産として計上していた。
ところが、低価法の適用により、原価ではなく低価を適用しなければならなくなった。
もう5年も売れていないので「スーパー貯金箱」の事実上の価値は 0円。本来ならば 0円で計上するところだ。
だが、佐藤カンパニーでは ERP を導入している。
導入している某社の ERP では 0円を計上できないため、1円で計上することになる。
1円×5万=5万円
これにより、5千万円の資産は、1000分の1になるわけだ。
このように、不良在庫を大量に抱えているメーカーや商社は、大幅に総資産価値を減らすことになる。それは株価に反映し、乗っ取りを計画する投資家たちの利益に与するだろう。
2007年度会計までは、原価法と低価法の選択適用ができた。
大半の企業が含み益を計上できる原価法を採用していた。
原価法から低価法への切り替えを、経理部員が手作業でやるのは不可能に近い。
ERP の導入が進んだことにより、実現できた法施行と言える。
ERP【 いーあーるぴー 】は Enterprise Resources Planning
その定義は「コンピューター・システムで 企業内にある情報を一元管理して、計画的に運用すること」
ERPを入れることで、個々のパソコンや、サーバーの情報を 1カ所のデータベースに格納し、それを個々のパソコンからWebページを見るかのようにブラウザーで閲覧できる。
ERPを実現するソフトを「ERPパッケージ」と言う。
ERPパッケージといわず、"ERP"と言う人が多い。
この分野では SAP、ORACLEが大きなシェアを占めている。いずれも外国の企業である。
目的は「経営資源の有効活用」
これは、会社をガラス張りにして、経営者からわかりやすくするということ。
経営者からわかりやすいということは、乗っ取って新しく就任した経営者にとってもわかりやすいということ。
ERPを入れている会社は、新しい経営者にとって、とても管理しやすい。
ERPを入れるということは、既存のシステムを捨てると言うこと。
入力画面は変わり、仕事の流れも変わる。
最新の IT と経営理論にかぶれた経営陣は喜ぶが、大半の社員は喜ばない。
やがて、ERPのために会社が停滞して、経営陣の喜びが冷める。
そして、乗っ取ろうと思っている人たちがとても喜ぶ。
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