1つめのパワージェル 3km→8km
3→4km
小さい女の子が道路左から走って飛び出してきた。
見た目にはゆっくり走っているように見えるマラソンランナー。彼女の目には渡れると思ったのだろう。全速力で走っているが、コースの右端を走っている僕にはぶつかりそうになった。
これが、散歩の途中ならば通してあげるのだが、こちら、ただいま競技中の身。悪いけど左手で止まるように制した。
17km関門までは、いわゆる車道。そこから先は生活道路。まだ、このあたりでは、警備員による統制がとれており、走りやすい。
交差点を曲がるのが夢だった。
テレビで見るマラソンは公道を縫うようにコースがとられていて交差点が多い。
だが、荒川は河川敷で、行ってこいの一本道。湘南も海辺の国道を行ってこいの一本道で、共に交差点がない。
今回は周回コース。同じところは二度と走らない。初めて曲がる交差点。一つめはおっ交差点と思ったが、2つめからはなんの感想も持たなかった。
4→5km
5kmポイントを前にペース表を探す。だが、走りながらではなかなか見つからない。ここから先、ペースの把握は欠かせない。
一度も歩かないという誓いがあるので、歩くわけにはいかない。仕方なく歩くような速度に落とす。
まず、ヘッドホンプラグを抜き、ポーチを腰から外す。それでようやく見つけた。5km→10kmも変わらず、ノルマは1km7分。
毎回ポーチから出していてはレースにならない。ペース表はポーチには戻さず、手袋の甲に押し込んだ。
5→6km
このあたりは10マイルとの併走コース。ジャージを着た中学生ボランティアが「→10マイル」「フル←」それぞれのプラカードを持ち、センターライン上に立つ。
伏し目がちな少年、頑張ってくださいと声をかけてくれる少女、3人くらいで集まりだべっていて、所定の持ち場に戻るよう注意されるワル坊主たち。
恐らく、学校をあげてマラソンにかり出され、月曜日はお休みというパターンなのだろう。
おらが町にマラソンがあるということが素晴らしい。
2万人のランナーが走る姿を目の当たりにする。それを支えるスタッフ、ボランティアに名を連ねる。そうした経験は、誰もが少年時代に味わえるものではない。
彼らはまだ、その意味がわからないかも知れないが、心の隅にしっかりとした財産が残るはずだ。
6→7km
6kmまではまだ一度も7分を切っていない。
いつもレース本番では知らず知らずのうちに、ペースが上がってしまう。ゆっくり走っているのに、ラップタイムがそこそこにいい。
なんだ、自分はこんなに速くなっていたのか?と錯覚する。それで、去年は失敗した。
今年は、必要以上にラップを上げまいと誓ってきた。
だが、いつまでも悠長ではいられない。ここらで粘らなければ、このままのんびりペースから、体が抜けられなくなりそうだ。
さらに、悪夢の関門にひっかかる可能性さえある。このレースの関門は17km、2時間15分の1つのみ。
万が一そこに間に合わないことになれば、レースが4時間も早く終わってしまう。
1年前、さほど疲れていない体で乗る帰りの電車は、とても切ないものだった。
今回は、そんなことは許されない。
前を行くランナーの中からペースメーカーを見つけて、追走を試みる。
やはり、目がいくのは同じサッカーユニフォームを着たランナー。
前方にいたクロアチア10番のユニフォームを着たランナーに着く。ただ、クロアチアの10番が誰だったかは思い出せない。僕が背負っているデコ以上に、マニアックな選択であることは間違いない。
この1kmは 6分50秒。初めて6分台に入れた。
7→8km
7.5kmのエイドが近づいてきた。この日1つめのパワージェルの出番。
3種類の味から手に触れたものをポーチから引き抜く。1つめは梅フレーバー。
パワージェル(パワーバー)は1983年にアメリカで生まれた製品。日本ではネスレジャパンが販売する。
梅フレーバーは日本独自の製品。私設エイドには梅干しが置いてあったが、梅干しを食べる習慣がないので、マラソンに梅というのはぴんと来ない。
今シーズン、日本では5つの味が販売されているが、国により種類が違う。他国ではキャラメル、ラテ、チョコレートなどがある。
マラソンも3度目。そろそろ、給食を持って走るのは卒業したいところだが、パワージェルは美味い。どうやら次のレースも止められそうにない。
摂りおえると、そのゴミを握ってエイドまで走る。口の中をすっきりさせるための水が待ち遠しい。
エイドに寄ったこの1kmのタイムは30秒落ち。
なぜだかわからないが、この大会のエイドはタイムロスが大きい。コースの左右にテーブルがあるエイドもあり、右往左往するランナーがコースを塞ぐこともあった。
エイドあたりの投げ散らかされた紙コップの数は、荒川、湘南に比べて格段に多い。
経験した3つの大会では、エイドのマナーは最も悪かった。
エイドのゴミ箱はポリバケツではなく、段ボールで作った口の小さいもので、かなりスピードを落とさないと正確に投げ入れるのが難しかった。
風は東北東 向かい風が吹き始めていた。
5月1日につづく
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