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2008年5月12日 (月)

2本の線の上を走る 20→25km

20→21km
左足が右足にぶつかり始めた。これは、練習では一度もなかったことだ。
これまで、ウォーキングでフォームを固めてきた。
練習ではいつも2本の線の上を走る。
左右の足が、平行する2本の線をトレースするように走る。

マラソン指南書には「1本の線の上を走るとよい」とする説と「2本の線の上を走るとよい」とするものがある。
一般的な素人は1冊の本を読み、そこに書いてあることを信じる。
だが、こうして2冊の本を読めば、正反対のことが書いてあるのが現実だ。

ただ「1本の線の上」説には、その根拠が書いていない。
「朝食は大切だ。朝食を抜くと体調が壊れる」と書いておきながら、その根拠を示した本を1冊も読んだことがない。
それに似ている。

「2本の線の上」説を唱える福岡大学 田中教授は、1本の線を走ると、体に余分な捻りが発生し、それは無駄な動きだと書いている。
2本の線の上を走ることには、もう一つメリットがある。
それは、両足が離れていて接触しないので、転倒のリスクがないということだ。
だが今日は疲れてきて、まさに足がもつれ始めている。
転倒しないよう、足運びを慎重にする。

21→22km
21kmを過ぎて少し走った頃、ぴっぴっとチャンピオンチップがセンサーを踏んだ音がする。
そうか、ここが折り返し点なんだな。と気づく。

右手前方にテレビドラマ「マラソン」で見た折り返し地点の下りヘアピンカーブが見えてきた。
ずっと、ここを走るのが楽しみだった。
バイクに乗っていた時の習性で、峠のヘアピンカーブにさしかかると、心が躍るのである。

ドラマではヘアピンカーブのところに折り返しのコーンが立っていた。
ドラマは創作であり、実際のコースとは違う点が多い。ここもその一つだ。

すると、ここで靴に石が入った。
練習でも時々、靴に石が入る。だが、その時の石は1mm程度の小石で、走っているうちにインソールの溝に収まってしまう。
だが、今日の石は史上最大と言っていい。
かかとを刺す痛みが違う。
靴を脱いで石を出すか?このまま我慢するか?という選択を迫られる。
靴は紐を結び直すと、なぜか、またすぐほどけやすくなる。
できれば、靴は脱がずに済ませたい。

22→23km
石をやりすごそうと、アウトソールの左右をとんとんと地面にぶつけてみたが、石はさらに中央に寄ってきた。
これではとてもあと半分を走れない。
仕方なく 22kmの看板を過ぎたところで靴を脱ぐ。
靴を逆さにして出てきたのは、2mm×10mmくらいの長方形の石。
この石の映像をずっと忘れないだろうと思った。

寸暇を惜しんで走り出したのだが、まだなにか入っている。
10秒も経たずに二度目のストップ。
こんなことを何度もやってはいられない。

これきりにしなければという苛立ちで、靴を民家のトタンに思い切りガンガンと叩きつけた。
大きな音は、家主を何事かと驚かせたかも知れない。

品のないことをしてしまった。きつく締めすぎぬよう、慎重に靴紐をむすぶ。
二度靴を脱いだことでのロスタイムは、46秒64。

ドラマ「マラソン」では主人公が転倒した細い林道に入ってきた。
路面が濡れ、足ももつれている。
これまでジョギングでも転んだことはない。ここで転んでは洒落にならない。

22.5kmのエイドを前に、最後のパワージェルを取り出す。
3つめはアップル。
走りながらメモを取ったわけではないのに、どの味の順番で摂ったかは克明に覚えている。
今回聴いた音楽85曲のうち、後で聞いたことを覚えていない曲が17曲あった。全体の20%だ。

人は聴覚よりも味覚の記憶力がよいのかも知れない。

これこそ、学会に発表しなければと思い、知人に打ち明けたところ
「単にパワージェルの方が、数が少なかったからでは?」
とつっこまれた。

23→24km
20-25km区間 自分との約束は7分45秒。だが、この1kmは8分1秒。
タイムを粘らなければならない。
下半身はもう終わっているが、まだ上半身が残っている。上は疲れてない。
このために腕立て伏せ千回、腹筋二千回をしたじゃないか。
ここからは腕を振る番だ。30kmからのマラソン本番までは、まだあるぞ。
そう言い聞かせる。

後で思うに、日頃から腕を振るフォームで練習していないから、まず足が終わってしまうのだろう。

24→25km
エイドの近く、距離表示の近くにラジカセが置いてあり、音楽が流れている。
音楽は魂を揺り起こす。
眠気を覚まし、正気を保つのに役立つ。
音のない世界で孤独に走っているランナーにしてみれば、このラジカセから流れる音楽が心を覚醒させてくれるだろう。それにしても、同じような小型ステレオラジカセ。同じような置き方。
走っている時は、地元の方の気配りだと思っていたが、主催者が置いているのかも知れない。

25kmのスプリット
目標 3時間15分
実測 3時間13分

20kmで、3分あった貯金は1分減って あと2分。思いの外がんばっている。
ただ、それは後からくつろいでタイムを振り返って思うこと。この時はもう、時間の把握まで、頭が回らなくなっている。

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