かすみがうら名物私設エイド 30→35km
30→31km
「30kmまでは練習。30kmからが本当のマラソン」
そう心に唱えつづけてきた。
ここまで、目標タイムとの誤差は0分。
後から思えば、測ったように順調な展開なのだが、この時はそうは思っていない。
30kmを超えたからといって、さぁいよいよ始まるぞ!という張り切りモードの気持ちは全くない。
そんな晴れやかな気持ちは、どこにも残っていない。
31→32km
31.3kmは去年、湘南で止められた第三関門の距離。
時計を見ると、今日もその時のタイムとまったく同じ。
どういうことだ?去年と比べれば、格段に走りこんできたというのに・・・
レースが終わって、考えてみた。
湘南では第一、第二関門を突破するために、前半から速いペースで走らなければならなかったし、第三関門前では全力で走った。
もし、あのまま第三関門を突破しても、制限時間内(第一回湘南は5時間40分)で、残る 11kmを走るのは無理だったかも知れない。
今年は行く手を遮る者はない。
自分がこの足を止めさえしなければ、ゴールにたどり着ける。
30kmを過ぎ、ここからがマラソン。まさに自分との戦い。
右足がつりそうになる。これは、去年も折り返してすぐに起きた。
あの時は大変なことになったと慌てたが、しばらく走っているうちに治っていた。
一度経験すると、やり過ごしてよいということがわかる。
痛みを忘れるまで、足を使わずにやり過ごす。
この後に左足、左ふくらはぎと順番に同じことがあった。
ありがたいことに今年も最後まで膝に痛みが出なかった。
丈夫に生んでくれた母への感謝を走りながら、口にした。
32→33km
呼吸は安定し、常に前を見て走っている。
我ながらやるものだ。
去年の湘南はとにかく暑く、ずっと下を向いて走っていた。
レース1週間前、最後の日曜日はいつも長時間のウォーキングをする。
今年は2時間半、多摩川沿いを歩いたが、途中で眠くなった。
きょう眠くならないのは、本番の緊張感もさることながら、音楽を聴いていることが効いている。
30km過ぎには「かすみがうら名物施設エイド(大会資料には施設と書いてある)が並ぶ」と聞いていた。
ずらりと居並ぶ温泉街のお土産屋さんのような光景が思い浮かぶ。
ここはその厚意に甘えることもマラソンのうちと思い、いつもよりパワージェルを1つ減らしてきた。
目指すのはおにぎり。
荒川市民マラソンでは、楽しみにしていた金芽米のおにぎりは、速いランナーと応援の人たちが食べてしまっていた。
今日こそは、マラソンでおにぎりが食べたい。
だが、行けども行けども私設エイドの隊列は見えてこない。
3か所ほど確かに私設エイドはあった。
おにぎりは見つけられなかった。もう予定していた食べ物が売り切れてしまい、撤収した後だったのかも知れない。
22.5kmで3つめのパワージェルを摂ってから、もう1時間半、給食していない。
何か食べなくてはと、バナナとビスケットを手にした。
33→34km
はるか前方にFCバルセロナのユニフォームを着たランナーがいる。
同輩と会うのは、3度目のマラソンにして初めてのこと。
ユニフォームの上には、13というナンバーのビブスを羽織っている。
歩いたり走ったりをくり返していて、辛そうだ。
ついに横に並んだ時、これこれと背中の20を指さし、合図を送る。
僕の背中に追走してくれるかと思ったが、足音は続かなかった。
沿道の男の子が、がんばれ~と叫んでハイタッチを求めている。
笑顔で手を合わせ「ありがとう」
去年のマラソンでは知らなかった言葉だ。
この1年で30万回のありがとうを言った。
ありがとうと言っている時、時間は緩やかに優しく過ぎていくことを知った。
今日ここに集ったランナーが一人一回ありがとうを言えば、1万回のありがとうがこの地に木霊する。それを言われた1万人の心が暖かくなる。
34→35km
左手、田んぼの向こうにかすみがうらが見えている。
景色を見ていると言うことは脳が活きているということ。
練習や準備の成果は、こうした最後まで気は確かだったところに現れていた。
最後のスタミナ切れがないよう、エイドごとに何か食べるようにする。
35kmエイドにはパンがあった。去年湘南で大量に余っていたパンを思い出した。
一つ手にして走りながら食べる。だが、むせにむせた。
やはり、パンは何か飲みながら食べるものだ。パンはもうやめておこう。
30kmを過ぎた頃から、辺りは歩いている人ばかりになっていた。
コースのまん中を歩いている人も多い。
歩いているかと思うと、走り出す人もいる。
これは調子が狂う。
右を抜けようか、左を抜けようか、追い抜くために少しだけペースを上げなくてはと考えている時、いきなりその相手が走り始める。
クルマを運転している時を思い浮かべて欲しい。
左側にクルマが1台路駐している。停車灯はつけていない。
少し右に膨らんでまさに抜こうとした時、発進のウィンカーも出さず、いきなりそのクルマが走り始める。
「おい、ウィンカー出せ。後ろ見ろ!」
まさに、それと同じ。ランナーには、歩いている時、走っている人への気配りができる人、できない人がいる。
気配りができるランナーにもたくさん出合った。
そういう人は、歩いていて、走りだそうとした時、僕が追い抜こうとすると、発進を待ってくれていた。
35kmのスプリット
目標 4時間37分
実測 4時間52分
30kmで、0になった貯金は、5分の借金に転じた。
頭の中では、万が一、走り続けられなくなった場合のタイムの暗算をしている。
1km10分で歩いたら・・ 15分で歩いたら
その時のために作っておいた「安全圏ペース表」は、ペースブレスレットと共に、預けた手荷物の中。
簡単なかけ算だが、計算力は小学2年生レベルまで低下していて、正しい答えが求められない。
「わっ、このまま1km10分ペースだと、完走できない」
頭の中が真っ白になったが、500mほど走ってから、計算違いだと気づいた。
ただ、呑気に歩いていられる場合じゃないことに変わりない。残り7.2kmを1km10分かかると72分。ゴール予測は5時間54分。制限時間まで6分しか余裕が残らない。
今日の誓いは「走りつづけること」だが、走り続けなければ、最低限の目標だったはずの完走すら難しくなっている。
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