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2008年5月19日 (月)

ロナウジーニョとバナナのステップ 40km→42km

40→41km
目標ゴールタイムにセットしておいた「In this country」が流れてきた。
曲を選ぶ時は、その場面、この曲で自分にこのような感情を呼び起こさせようという意図を描いている。

この曲はかつて、CXがF1中継のエンディングで流していた曲。
長かったマラソンのゴール
やり遂げたランナー(自分)
暮れていく空
やり遂げた充実感と、終わってしまったことへのかすかな寂しさ

こうして書いてみると、いかに自己満足でマラソンと取り組んでいるかがよくわかる。

40km過ぎの地点で、この曲がかかるということは、目標タイムに及ばなかったことを意味している。
だが、今考えることは、走りきることだけ。
沿道の応援者はほぼ皆無の後半だったが、ここにきて、声援が飛ぶようになってきた。
20代のグループが、通り過ぎるランナーをおもしろおかしく茶化しているのが見える。

僕の番がきた。
「お、バルセロナ がんばれバルセロナ。ACミランに出すぞ!」
ロナウジーニョの移籍に引っかけて、へろへろに走っている僕をやじってくれた。
思わず苦笑い。そして、とても嬉しい。

通り過ぎてから、彼らに向かって「これこれ」と背中を指さす。
「お、デコ、デコ頑張れ!」
一ヶ月後ならば、デコ、インテルか?と言われたかも知れない。

声援に心が暖まったところで、目の前に交差点が迫ってきた。
そのかどを右に曲がれば、そこにはもう競技場の姿が見えているだろうと確信している。

ところが、そこにあったのは延々と続く川沿いの道・・
さらに、ランナーの列は、遠くで左折して川を渡っている。

ウソだろう。ウソだと言って欲しい

この瞬間はこのレース中、一番ショックが大きかった。
もう何も考えられない。
あとでこの時、何を考えたかを想起しても、何も出てこない。
脳は記銘を拒否したようだ。

ようやく橋を渡り、競技場への道へと左折。
すると、いきなり沿道の人が増えた。
いや、沿道ではない。コース上だ。
まさに走路の先に、たくさん人が居るのだ。

コース上におばちゃんが出てきている。
「はい、バナナよ。頑張って」
4月に大学のキャンパスで、新入生を勧誘する応援団を思い出した。
行く手を封鎖して、幼気な一年生を拉致しようとする。
捕まったら最後、入団するまで帰れない。
(今はそんなことないと思うが・・)

おばちゃん達は軽快なステップを踏んで、このランナーの次はあのランナーと、次々にバナナを勧めていく。
ランナーも快く、それを受け取っている。

残りは 1kmを切っている。もう給食は要らない。
今食べたところで、ゴールまでの糧にはならない。空腹を満たすのはゴールしてからでも遅くない。

おばちゃんとおばちゃんの隙間を見定めて、突破を試みたが、バナナを差し出す手が、にゅっと伸びてきた。

「すみません」と片手をあげて、素通りする。
背後で「あんた、無理じいして渡しちゃいかんよ」とツッコミが聞こえた。

41→42km
どこかに42kmの看板があったのかも知れないが、目にはいらなかった。
右折して、競技場に入る。
いや、右折だったと思う。記憶は曖昧。

子どもの頃からずっと、マラソンで公道から競技場に入るシーンに憧れていた。
できればスタンド下の薄暗い通路を通りたかった。
姿を現した瞬間に、静まりかえったスタンドから地鳴りのような拍手が欲しかった。

5月22日につづく

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