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2008年5月23日 (金)

かすみがうらを走った

時計は16時を回っている。
制限時間は6時間。ここから後は、完走扱いにはならない。
いったい、どれくらいの完走率になったのだろうか。

東京マラソンは 97.8%(2008年大会実績)という完走率が、一般人を驚かせた。
2万5千人が走って、完走できない人がわずか 2%しかいない。
これには「え~っ、走れない~ 絶対、ムリぃ~」と言っている人も、軽くショックを受ける。
なんだか、自分がとてつもなく、運動能力が低いように思えるのだ。
人は内心、もっと低い完走率を期待している。
走れないのは、皆、同じだと思いたい。

後半、僕の周りで歩いていた人たちは、恐らく皆完走できていないはずだ。
男女ランキングの数値から推計すると、完走者:8,836人(男7571/女1265)
参加者は9,733人なので、完走率は90.78%。

東京マラソンより 7ポイント低いのは、制限時間が1時間違うからだ。
素人が目指す初マラソンとして、かすみがうらの6時間はぎりぎりの線だろう。
2008年11月に開催される、第3回湘南国際マラソンは、第1回の制限時間から20分延ばして、6時間制限となっている。

荷物預かり所の手前にある、自販機に目を留める。
まだ、飲み足りない。
ウェストポーチに 500円玉が入っているのを思い出した。
練習時、万が一のバス代に使おうと、いつもポーチに入れている。
いわば、お守り代わりの500円玉。レース中に使い道はないのだが、縁起を担いで入れたままにしておいた。

「ジョージア VINTAGE LABEL」と「アミノバリュー」
自販機で2本買いするなんて、人生で初めてではないか?
「VINTAGE LABEL」は甘くなく、苦さが心地よい。
あまりに美味かったので、後日何度か飲んだが、いずれも甘く、この時の味にはならなかった。

露店前の椅子は満席で、ランナーが食べ物にかぶりついている。
チョコで少ししのいだというのもあるが、腹は減っているし、食べたい気持ちもある。
だが、満腹になれば、一気に安全な日常に戻ってしまう。もう少しこの飢餓の余韻に浸っていたかった。

荷物預かり所は人影もまばら。
荷物はもう残り少なくなっていて、ナンバーカードを示すと10秒で出てきた。
テニスコートのスタンドに陣取って着替える。

腰を落ち着けると、心に安堵感が広がり始めた。
陽が翳り、空気は冷たいが、疲労が心地よい。
ゴールしたら、コミュニティ「かすみがうらマラソン」のトップ写真用にゲートを撮ろうと思っていたが、思い出したのは帰りの「ひたち」が駅を離れた後だった。

完走すると不機嫌があらわになる。
痛い、疲れた、歩けない
次々に悪態をつきたくなる。
それは完走したからこそ、できること。
今は足の疲れさえ心地よい。その傷みが栄誉を思い出させてくれるからだ。

完走して乗る、帰りの電車は格別。
特急の指定席を奮発していたから、ことはなおさら。
去年は藤沢からの帰りの電車で、小さくなっていた。

これで、半年食べなかったアイスも、控えていた冷たい飲み物も飲み放題。
あぁよかった
牛久を過ぎた頃、実感がわいてきた。

一年前の惨めさを思えば、まさに雲泥の差。
去年は走りを止められた時、息も切れていなかった。
「ひたち」はあっという間に上野に着いた。

胃袋の下が凹んでいる。
レース前のVESPA、ここ一週間のカーボローディング、すべてうまくいった。
5日前に腹をこわした影響の有無はわからない。

曇りの天候に恵まれた。
雨が汗と混じって目に入ったのは辛かったが、雨はほどよく体温を下げ、そして、すぐにあがってくれた。

炎天下で 10kmを走った練習の時よりも、汗はかかなかった。
「30kmからが本当のマラソン。それまではジョギング」
そう言いつづけたのも、功を奏した。
ただ、42kmを走りきるスタミナはまだなかった。

「マラソンというのは自信で走るものだから、やっていないと、どうしても怖くなってしまう。その不安を取り除くのはやはり練習しかない。」
瀬古利彦 「東京マラソン完全ガイド」ダイヤモンド社 2007年8月

最後の10kmを怖がらず、ペースを守るための負荷を体に強いることができた。
これは過去2度の経験で目安ができたこともあるが、やはり、ここ4か月の準備が自信となった。

家に着く頃、猛烈に腹が減ってきた。

「かすみがうらを走る」 おわり



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