匿名メールアドレス禁止法
彼女は、相手が理解するのに十分な単語だけで話す。
言い訳のための付け添え、あげ足をとられぬよう先回りした言い回し、いわゆる官僚的なことばは使わない。
あえてあと一言を言わない。
その潔さは、あなたを信頼していますというメッセージだ。
寄せられた信頼に、人は信頼で応える。言い訳は言い訳を呼び、あげ足取りをする人には、あげ足取りが返ってくる。彼女は人と人が信頼し合うことの本質を、よく理解している。
IDO任期の5年間、就業日で1,000日。毎日、最低 1つの新法を作る。IDO千法、その記念すべき第 1号は、あとに続く新法の礎になるものにしようと思っていた。
匿名メールアドレス禁止法
メールアドレス取得時は、住民基本台帳番号の登録を必須項目とする。
メールサービス事業者はアドレス申請画面で、住基番号を必須としなければならない。
事業者は、申込みを受けると、住基ネットセンターに照会データを送る。
センターは 10分以内に回答する。インターフェースのデータ項目は「住民基本台帳番号」「氏名漢字」のみ。
ここでデータの不整合があった場合、メールアドレスは発行できない。不正申請者には、マイナス50万ポイントが付与される。
また事業者は、検察官の求めがあった場合、犯罪に使われた恐れのあるメールアドレスについて、登録全情報を開示しなければならない。
一人でいくつでも取得でき、ほとんどが匿名登録されていたフリーアドレスは「フリーアドレス破棄法」により、3か月以内に全廃する。
29年前の2005年には、特定電子メール法が施行されて「発信者の詐称」「迷惑メールの送信」が禁止されていた(一年以下または 100万円以下の罰金)
しかし、匿名のフリーアドレスには規制が無く、それがネット上で個人、企業の誹謗中傷に利用されてきた。
気味の悪い匿名社会は、真っ当な人々から、情報発信意欲を奪った。
「ゲームが脳に悪い?根拠はあるのか?」
「外国人移住者を受け入れたら、ますます田舎が寂れるだと?地方をバカにしてるのか?」
フリーアドレスから発信されるあげ足とりを嫌って、ブログの書き手は全盛時の3分の1。3百万人代に落ち込んでいる。
情報発信側は、企業やWebページのブランドを背負っている。
フリーアドレスのブラックメーラー達は、相手が強く反論できないことにつけ込み、言いたい放題をくり返す。こんな横着者から真摯な著作者を守らなければならない。
@禁止法
「アットマーク禁止法」では、2035年2月以降、メールアドレスに@の使用を禁止した。既存のメールアドレスを一掃するためだ。
@に替わる記号は凸。
これ以降、すべてのメール事業者は、@を含むメールアドレスから発信されたメールを、迷惑メールとして、メールサーバー側で削除しなければならない。
僕のアドレスは ido凸ido.jp となった。
会員から個人情報を取得しているプロバイダーが発行したメールアドレスは、@を凸に置き換えるだけで使うことができる。
フリーアドレス業者にはドメイン名(@から右側の部分)の変更を義務づけ、旧フリーアドレスのドメインも削除対象とした。
2000年代から凹む(へこむ)が、落胆を表すことばとして広く使われるようになった。僕はこの日本特有の凸という文字に、メールが人を楽しい気持ちにさせるという願いを込めた。
また、迷惑メールの巣窟である海外サーバー対策として、後に設置した「独立通信委員会」の管轄下、国内外すべてのサーバーを登録制とした。
安全が確認されていないサーバーからのメールは、すべて水際で削除する。登録されている海外サーバーに限り@アドレスを通すようにした。
電子政府
僕が法務省に入った年に成立した電子三権法により、日本政府は 2020年に電子化を終え、世の中はコンパクトになった。そうしなければ、国と地方の財政は破たんしていた。
中央省庁と地方公共団体の公務員数は、2010年ピーク時の半分に減った。
ただ、住民による電子投票だけが普及していなかった。
「インターネットや携帯が使えないお年寄りはどうする?」
こういう議員が全国にいたからだ。いつの世でも、こうして反対するのは、導入されると困る人達だ。
投票率が高い高齢者層だけに、政治家が過敏になる時代は終わりにしなければならない。
マクロで見て環境・食料・エネルギー。
ミクロで見て年金・税金。
地球も国もボロボロにしておいて、次世代のこども達に「はい、ひどい国になっちゃったけど、後はよろしく」と渡す訳にはいかない。最悪でも現状維持で渡すためには、誰かに気兼ねしてはいられない。
すべての投票を電子化する法
2034年度いっぱいで、すべての投票を電子化した。
「お年寄りはどうする」
そう、ご心配いただいた政治家の声にも答えなければならないので、投票方法の訪問指導を制度化した。
全国に350のNPOが設立され、その中心メンバーは主婦。
原資は日本ポイント制度。指導一回は3000ポイント。
指導といっても、携帯電話、地上デジタルTVのいずれかが、ほぼ全家庭に普及していたので、内容はごく簡単なもので、技術料と言うよりは世間話料といえた。
次回は6月2日(月)に掲載します。
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