戦った 粘った 負けなかった 走りきった
こぢんまりとした競技場は、エントランスというものもなく、呆気ないほどあっさりと場内につながっていた。
競技場に入った後はトラック4分の1周でゴールだと知っていた。どうせならば、トラックを1周半くらい走らせて欲しい。
拍手を受けながらのトラック1周は苦にならないが、競技場がなかなか見えてこないのは苦しい。
公道部分をカットして、トラックに回してもらいたい。
電光掲示を見た。目標タイムにロスタイム分を足した時間が表示されていた。
グロスタイムの目標を、ネットタイムでクリアする。それにわずか1分遅れた。結局、あの靴を脱いだ分だけ届かなかったことになる。
でも今日は「歩かずに完走」をするレース。それができれば後はどうでもいい。
やっと終われる。
この時考えていたことは、ただ一点。
42kmも走ってきたのに、達成感や歓喜のポーズもない。
all sports 撮影の写真では、35kmのりりしい表情とは打って変わり、情けない表情で時計を止める自分が映っている。
特別な感慨はなく、この時にどの曲が鳴っていたかも覚えていない。
大の字にひっくり返りたいところだが、まずは体のためにも大量に給水したい。
水をもらうには、その手前でチップを返却して、引き替えにTシャツを受け取る必要がある。
この順番、逆にして欲しい。
せめて、まず水だけは飲ませてほしい。
そう思ったら、芝に尻を付いて座り込んでいた。
ボランティアの兄ちゃんが声をかけてくれる
膝をついて、靴のチャンピオンチップを外し、再び靴紐を結んでくれた。
「もうしばらくゆっくりしますか?」
この機会を逃したら、手助けはしてもらえない。
手を引っ張ってもらえますか?
彼の手助けで立ち上がる。
記念品のTシャツのサイズは事前申告制。
ナンバーカードの隅っこに「M」と書いてある。
Mサイズのテントはどこだ?と探しながらの歩きは千鳥足。まっすぐ歩くことが難しい。
さっきまでこの足で走っていたことが信じられない。
チャンピオンチップと引き替えで、受け取ったTシャツは青。
去年、湘南ではもらえなかったTシャツ、今年は手にできた。
3度のマラソンでTシャツが2枚になった。
ようやく給水にたどりつく。
立て続けにアミノバリューを2杯もらい、バリケードに寄りかかって、ゆっくりと飲む。
それからバナナ。
もう走り終えたので、バナナでも何でもどんと来いだ。
憔悴して貪るように食べる様子に、おばちゃんがこちらを見てにこにこ笑っている。
この屈託のなさは、おばちゃんならでは。
これから家まで帰るのが大変だよね おばちゃんの会話が聞こえる。
「家まで帰れますか?」
大きな声で呼びかけてくれた。面目ないですという顔をして頷く。
バナナの隣に「チョコ」の字が見える。
そういえば、甘いものが欲しい。キットカットが2種類。その場で封を切って2つとも食べた。美味い。
チョコの隣には、完走証のテント
係の女性が、ナンバーカードを視認するや、4桁の数字を打ち込み実行キー一発。
プリンターから2秒もたたずに出力される。
「はやっ!」
完走証の即日発行は、かすみがうら自慢のサービスだ。
場内では、ゴールする選手を讃えているのか、しきりにマイクで何やら、がなり立てているが、何を言っているのかは全く耳に入らない。
ナンバーカードの安全ピンを外し、2005年にカンプノウで買ったユニフォームをゼッケンから解放する。
そういえば、レース直前に、デコからファンクラブのみんなへお返事のカードが届いたのだった。あれは、レースを前にした不安な時期に勇気になったなと思い返す。
完走証を握りしめ、千鳥足で歩き始めた。
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