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2008年5月 7日 (水)

買い戻されたビンテージクラブ

「7番アイアンっていつ使うの?」【 8 】

「これってどうやって打つんですか?」

目の前には、ゴルフセットが置かれている。
年季のはいったバッグに、年季のはいったクラブ。ウッドはパーシモンだ。
などというのは後に思うことで、その時は生まれて初めてみるゴルフクラブに戸惑っている。

どっちに向かって打つかくらいは素人にもわかる。
前後の林や、今出てきたばかりのクラブハウスにボールを打ち込む競技でないことは察しがつく。

だが、クラブを構えて見ても納得がいかない。
こんな凸凹の面でボールがまっすぐ飛ぶのだろうか?
反対側の平らな方で打った方が、いいのではないか?

渋々、一度素振りをする。
そこで、周囲が騒然とした。

「おまえ、左利きなのか?」

そうですよ。僕は生まれながらの左利きですよ。
お箸と鉛筆は下関のおばあちゃんが厳しく母親に言ったから、直しましたけどね。
と言っている場合ではない。
ソフトボールのバットはいつも、左から右に振っているし、棒状のものを右から左に向けて振ったことは一度もない。

なんだよ、左利きなら、そう言えよ
という先輩に、ゴルフだったらゴルフだと、前日に言えよ
というツッコミは心に仕舞う。

四の五の言っても始まらない。
ゴルフ場の貸し靴でティーグラウンドに踏ん張り、生まれて初めて棒を右から左へ振った。

すると、芯を食った(=真芯をとらえた)ボールは、風を切る音を残して、300ヤード彼方で弾んだ。
わけがなく、ぽくっ という鈍い音を残して、5m先に転がった。
皆が笑い転げている。
今思えば、なぜボールに当たったのかが、わからない。

ゴルフ場での記憶はここまで。
つづきの記憶映像の中の自分は、その数時間後、ハーフで上がって(=1ラウンド18ホールではなく、9ホールでやめて)山口駅のホームで、九州へ帰る電車を待っていた。

先輩が用立ててくれたゴルフクラブは、おじいちゃんからのお下がりだという。
お前にやると言われたが、いい大人がタダでもらうのはかっこがつかないので、1本あたり千円×14。キャディバッグ(ゴルフクラブを入れるバッグ。キャディさんが持って回るのでこう呼ぶ)千円。合わせて15,000円で買い取った。

しかし、数ヶ月後、ビンテージで値がつくクラブだということがわかったらしく、5千円プレミアをつけて、2万円で再び、先輩の元へと帰って行った。

 その後、4年間、ゴルフはどうしても断り切れないコンペ以外では、一切しなかった。

7番アイアンっていつ使うの?もくじ

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