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2008年6月10日 (火)

立法ブリーフィング

 ・名字の君呼び、さん呼び
 入省歴の上下を問わず、就業時間中にお互いを呼ぶ時は、男は名字の君付け。女は名字のさん付けで呼ぶ。
 「ちゃん呼び」は禁止した。
 上司が一部の部下だけを「佐野ちゃん」と呼ぶことがある。本人は親しみを込めているだけなのだが、親しみを込められなかった傍の人にはとても感じが悪いからだ。
 さすがに僕を佐野君とは呼びにくいだろうから、僕は「IDO」と呼んでもらっている。

 ・遠慮なくつっこむ
 立法ミーティングで僕が出した法案には、遠慮会釈なしにつっこでもらう。遠慮されると、些末なものごとについての法律が出しづらくなる。

 千日で千法を作るのが自らに課したノルマだが、千日満遍なくアイデアが出るわけではない。
 そこで、アイデアが出ない時のために、法案を書きためておくことがある。溜めておいても国民が困らないようなことだから、些細なことが多い。
 目標法「テレビは夜八時まで法」などは、その一つ。
 子どものテレビは夜八時まで。八時過ぎに見たいテレビ番組があれば先に勉強を済ませて、お風呂に入る。
 「今日は 7時から宿題をやるから、8時から ワールドカップ予選 を見てもいいでしょ?」
と子どもが言えば、そこは親子での話し合い。土日は時間制限を設けていないので、録画して週末に見せる家庭も多い。こうして、ほとんどの子ども番組は録画で見られているため、CM明けまで展開を引っ張ったり、CM明けも導入を繰り返したりという手法は絶滅した。

 「これって、ブリーフィングは文科省ですよね。多摩川大臣はなんかひとこと言いそうですよね」
 「家庭の問題を法で裁くのか!ってね」
 文科省から来た田中君と別府さんのつっこみがはいる。物言う分別のある彼らの、自由なツッコミからアイデアが膨らんでいく。
 結局、同法では「テレビは八時まで守りましたカード」のハンコが一か月埋まると、100ポイントを付与した。
 「おじいちゃんが『夏休みになるとラジオ体操のカードを、ハンコで埋めるのが楽しみだった』って言ってたんですよ」
 という田中君の言葉がきっかけになった。

 毎週水曜日は、犯罪統計を見ながらのミーティング。
 殺人、強盗から道での痰吐きまですべての犯罪は、その日の入力分が日次で集計され、関係省庁の権限保有者が閲覧できる。この情報の国民への開示は一月と七月の年二回とした。過去分については、1970年以降のデータをCSV形式で開示した。

 凶悪犯罪は、日本が「世界の工場」と呼ばれ始めた2010年以降減り続けており、2035年に僕がIDOに就任した後も、その流れが続いている。
 高度成長、バブル、失われた一〇年、世界の工場、思考停止の一〇年と、それぞれの一〇年期に冠がついている。
 過去70年の犯罪数推移と時代の冠には、どのような因果関係があるのだろうか?それを国民に考えてもらいたい。それが1970年という、かなり昔のデータから開示した理由だ。

 15:00 ブリーフィング
 午後三時からの一時間は立法ブリーフィング。各省庁の大臣がIDOラボにやってくる。

 ブリーフィングに呼ぶ方の呼称を「参考人」とした。参考人という呼称は衆議院、参議院でも使われているが、ここでは少しルールが違う。
 衆参各委員会では、規則により参考人は議員に質問することができない。ただ質問を受けるだけだ。
 それでも時々、規則を曲げて委員長に質問を迫る人がいる。衆参のインターネット中継で見ていると、それはそれで面白いが、衆参の規則は変わらない。

 一方、IDOの立法ブリーフィングでは、参考人は法案について質問をすることができる。
 立法内容のブリーフィングは、所管省庁の大臣を相手に行う。官僚の出席は禁止。僕はメディアとは直接接触しないので、この場が唯一、世間との接点となる。これは、就任条件として橋本に出した四つのお願いの一つ。

 まず、僕からのプレゼン。手書きのメモをスクリーンに映し出す。
 総合日本商事で、僕がつくったソフト「セールスマッピング」も使わない。
 上げ足をとられぬよう周到につくるスライドショーは、ここでは必要ない。
 人間の脳はいったん視覚に訴えられると、ことばは聞こえなくなる。すると画面に書いていなかった文言を口頭で補足しても頭に入らない。ブリーフィングは十分な理解を得ることが目的なので、それでは困る。

 2000年代には猫も杓子もプレゼンに使っていたスライドソフト。グループウェアという電子的なスケジュール管理。隣りに座っているのに会話もしないワークフロー(電子決済)..
 先進国のビジネスマン達は、時間をハードディスクに捨てているだけということに気付くのに、20年を要した。失った時間は実にもったいなかった。もし20年前に、僕が独裁者になっていたら、スライドソフト、ワークフロー、そしてERP禁止法を出していただろう。

次回は6月12日(木)に掲載します。

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