報道士法
報道を歪めていたのは、"支度"を"しど"と、平気で読み誤る若手アナウンサーではなく、ニュースを選んでいた役職者たちだ。
報道士試験は面接と論文。報道の使命、見識の広さを問うだけのものだ。
報道各社の経営者はこの法律を喜んでくれるかと思ったが、いたく不評だった。受験前から落ちると観念したのか、要職者がこぞって報道から管理部門へと転部を志願したと聞いた。
学科試験があるわけでもないので、まず落ちることはない。
これはふるいに掛ける試験ではなく、資格によって誇りを持ってもらうための試験。実際に落ちたのは論文を白紙で出した人、面接で黙秘した人だけだ。
長年メディアに携わって来た方々には、憤懣やるかたない制度であることは分かる。ただ、次世代のメディア業界を夢見る人たちに、メディア本来の自由、使命を考えてもらうために制度化した。
月水金以外はすることもないので、夜はずっと活字を読んでいる。
報道士法について、メディアはこぞって「言論の弾圧だ」とする論調を載せた。
大手新聞社が掲載した世論調査結果
報道士法は表現の自由を制限すると思う 70%
報道士法は知る権利の侵害につながると思う 65%
IDO室 意識調査ウェブ(非公開)
報道士資格化に賛成である 89%
報道士法は廃止すべきである 5%
調査対象の属性の違い、サンプリングの違いで結果はこうも異なるという好例だ。
谷村総務大臣の「女性アナ発言」を聞いて、メディアと政府を切り離す必要性を痛感してつくったのが「JNW法」
政府から独立した独立通信委員会(Japan Network and Wave)を設置。総務省の許認可権である電波を始めとして、メディアとインターネットに関するあらゆる管理を行うことにした。
独立通信委員会の元で立ち上げたニュース放送局 bola!(broadcasting ola!)のモデルは、1996年に設立されたカタールのアルジャジーラ。
当時の首長シェイフ・ハマドの支援を受けた事実上の国営放送でありながら、政府の肩を持つことなく中立公平を維持している。国王がつくるアラブの視点を持つメディアには、世界中のメディアが学んできた。
「bola!法」により、地上波キー局、衛星局は毎年10人(任期5年) 地上波地方局は毎年2人(任期3年)のスタッフを bola!に出向させることを課した。
bola!は、事実上の放送学校となった。
現場からアジアの視点で報道する。使命はそれしかない。
記者には時間だけがアサインされ、どのようなニュースを流すかは現場にいる記者に委ねられる。人間として正しいか、真っ当に生きるとは何かを考え、他人のために役立つ人がいれば、行って話しを聞く。
世界じゅうで認められている自動車や鞄メーカーの社員に「会社に忠誠を尽くせ」という社是は要らない。愛国心は標語や法律では生まれない。法律で国を守れと言えば、国民は反発し、さらに心は離れる。
日本ブランドに誇りを持つことができれば、国民には自然と愛国心が生まれる。
日本は過去40年ほとんどの期間で、世界一のODAを拠出してきた。発展途上国を支え、貧困問題を縮小してきた。今は100万人が、技術供与・指導の任務で海外にいる。
「世界の工場」と言われ始めた2010年代以降、工作機械、工作技術は日本の独壇場。世界の工場は日本の設計図で動いている。日本のものづくり無くして、今日の便利な世界は成り立たない。
2000年代、低賃金で手を動かす国が「世界の工場」と呼ばれていたが、2010年代に日本が呼ばれたそれは違う。工作機械が基本労働を無人化する。すると人は要らなくなるのではなく、より創造的な仕事に就くことになる。
一方「世界の工場」は、日本が優秀な工作ロボットをつくる度に、世界中のどこかで人々が職を失うということも揶揄している。ただ、それを補って余りある技術支援をしてきたことが、今、世界で最も尊敬される国という地位を築いている。
1980年代以降、日本の電子技術は同盟国軍を支えており、その圧倒的な戦闘力は敵対国の兵器市場をせん滅し、戦う意欲を減退させた。
どれだけ血を流しても、平和を達成できなかった世界の中で、日本は戦わずして戦い無き均衡をもたらした。自衛隊の隊員減少が社会問題として表面化しないのは、日本の電子技術に遠因がある。
bola!は視聴率や部数という数字に捕らわれることなく、アジアの視点で自由に伝える。
事実を正確に伝えるだけで、日本人は自信を持つことができた。学者は日本社会の病理を論い嘆いてきたが、最近すっかり静かになった。
bola!という名前は、スペイン語のオラ!=やぁ!が語源だと思われているが、僕は出世魚のボラにちなんで命名した。
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