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2008年7月 2日 (水)

成功するゴルフコンペ幹事の秘密

「7番アイアンっていつ使うの?」【 16 】

 ゴルフ場の朝。
 着替えてトイレを済ませると、まずキャディマスター室に向かう。

 キャディマスター室の前には、スコアカード、ボールマークが置いてある。
 グリーン上にボールが乗り、他のプレーヤーのパットの道筋にボールがある場合、ボールを拾い上げる。その際、ボールがあった位置の目印として、ボールマークを置く。

 そのゴルフ場のエンブレムなどがデザインされており、毎回2~3個持って帰る。自分で回ったコース数だけ、ボールマークがたまるのが楽しい。

 ボールマークは、ゴルフ場備え付けのモノを使うというルールはない。
 自分で持ち込んで使ってよい。今川焼きでは、他の人のボールが止まってしまうが、コインならば問題ない。
 「自分は、海外旅行に行く人なのだ」
 ということを自慢したい人がよく、外貨を使っている。

 ある日、ボールマークとして 500円玉を使っていた時のことだ。
 さて、パットを打とうと思ったらボールマークがない。
 仕方なく、ボールがあったと思われる位置から打った。

 次のホールに向かって歩きながら、その話をしたら「あ、あれって君のだったの?儲けたと思ってひろっちゃったよ。紛らわしいことするなよ」といいながら、同組のナカノさんがポケットから500円玉を出した。
 ナカノさんとのゴルフは、この日が最後になったのは、言うまでもない。

 ゴルフコンペの幹事となると、キャディマスター室では2つの質問をする。
「気をつける、ローカルルールが何かありますか?」
「ドラニアはどこがいいですか? ドラコン2回、ニアピン2回やろうと思ってます」

 ローカルルールはそのゴルフ場ならではのルール。
「14番ホールのウォーターハザードは、無罰で手前から打ち直す」
といった、特別な決めごとだ。

 ドラコンは、ティショット(第一打)を遠くに飛ばす(driving)ことを競う(contest)
 ティーグラウンドからみて、フェアウェイの見通しがよく、その距離が長いホールで行う。
 ロングホール(パーが5打のホール)で行うのが一般的だが、ロングホールのフェアウェイがドッグレッグしている(曲がっている)場合、ミドルホール(パーが4打のホール)が推薦される。
 遠くに飛ぶことを競うが、フェアウェイを外した場合は、距離は出ていてもドラコンの対象外となる。飛んで曲がらないことも大切なのだ。
 すべての参加者がフェアウェイを外した場合は、持ち越して、その後のホールで行うとよい。

 ニアピンは、ショートホール(パーが3打のホール)で、第1打がピンに近い(near)ことを競う。
 すべての参加者がグリーンを外した場合は、持ち越して、その後のショートホールで行うとよい。

 幹事はこれらの情報を収集したら、集合時間に皆を集めて朝礼を行う。

「おはようございます。今日は日頃の皆さんの行いがよいため、絶好のゴルフ日和になりました。」
とまず、天候の話題から入る。
 ここで「昨日、長崎で起きた玉突き追突事故は」といった時事ネタや「最近、すっかりメタボが気になり始めた佐藤部長の発案で開催する今日のコンペは・・」というような、楽屋ネタから入ってはいけない。

「では、早速ですが、ニアピンはアウトの13番、17番、インの5番、8番。ドラコンはアウトの14番、18番、インの3番、9番でおこないます」
 それを聞きながら、参加者はスコアカードのホールNo.に○をつけていく。
 ○つけが追いつかないような、早口で言わないようにしよう。
ゆっくり言っても「えっと、インのドラコンは何番?」と聞き返す人が必ずいる。人の話を聞け!と言うと相手と同レベルになってしまうので、にこやかに対応しよう。

 あとは、ローカルルールがあれば、それについて触れて
「それでは、今日一日、ゴルフを楽しみましょう!」
とにっこり笑って、爽やかに締める。
 お通夜のような辛気くさい顔をして「まぁ、せいぜい怪我して入院しないよう、気をつけてください」などと言ってはいけない。
 
 

 朝礼が終わると、残された幹事の仕事は、表彰式の司会くらい。
 表彰式では、優勝(実打数からハンディキャップを引いた打数が最も少ないゴルファー)、準優勝、ベスグロ(ベストグロス=最も打数が少ないゴルファーに贈る賞)以外に、次のようなお楽しみ賞を設ける。

・当日賞(20日ならば20位)
・大波賞(前半9ホールの打数-後半9ホール の数が最も大きい ただしマイナスはダメ)
・小波賞(前半9ホールの打数-後半9ホール の数が最も小さい ただしマイナスはダメ)
・BB (ブービー ブーのB つまり最下位の1つ上位)
・BM (ブービーメーカー つまり最下位)

 これらは、客観的に決まる賞だが「珍プレー賞」のように主観的に決めるもの、決めうちで贈りたい人がいる場合の「遠来賞」など、コンペの各賞は幹事が自由に発案できる。

 ゴルフの幹事は、とても楽しい。
 限られた予算で、参加者が笑顔になるような、賞品を発掘するのも楽しい。
 妻帯者が多いコンペでは「お父さん、やったよ!」と家族に自慢できる「食べもの」が喜ばれる。

 それなりに準備には時間をとられるが、一度経験してみるとよい。
 料理や酒の追加、部長のカラオケの好みまで、気を配らなければならない宴会の幹事と比べれば、楽なものだ。

 朝礼が終わると、個々の好敵手同士が「にぎり」の交渉にはいる。
 にぎりとは、賭けゴルフのこと。
 互いにハンディキャップ無しで「にぎる」場合は「スクラッチ」
 片方が1ホールにつき1打のハンディを与える場合「エブリワン」
 片方が1ホールにつき2打のハンディを与える場合「エブリツー」

 エブリツーで賭けるのは希。
 エブリスリーは聞いたことがない。
 1打につき、いくら賭けるのかは、賭けたことがないのでわからない。

 ゴルフコンペ参加者全員で賭けることを「総にぎり」と言う。
 総にぎりでは、ど素人は数万円単位の負けを背負うことがある。
 ゴルフ場のプレーフィー、食事代、会費だけでも数万円。さらに負けゴルフで数万円では、悲惨な気持ちになる。
 洒落にならないので、夢見るど素人ゴルファーのためにも、総にぎりはやめてもらいたい。

 って、賭けてるじゃん(笑)

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