若い世代の無軌道ぶりは許せない。
六 見直し
【公共の場所で迷惑をかけない法】
「公共の場所で迷惑をかけない法」は公共の場所で、音楽・ゲーム・馬鹿笑い・大声で周囲に迷惑をかけてはいけないと定めている。
どれくらいが大声なのか、それは真っ当な心があればわかる。
IDO法には「30デシベル以上が大声です」といったサブマニュアルは一切ない。
通報により逮捕されると、国家公安委員会が管理する前歴データベースに登録される。
店舗・施設側には30分以内に警察または自警団に通報する義務がある。裁判員制度開始の10年後に成立した自警団法により、地域には有志の自警団が組織されている。IDOにとって国家公安委員会は管轄外だが、自警団で活動される方には、日本ポイント制度による表彰ポイントを付与している。
「いつも日曜日の朝九時になると、近くの図書館に行き、本を読むのが楽しみです。朝の時間帯は空いていて、ゆったりとした時間が流れています。ただ、土曜日が六時間授業になったせいなのか、このところ、日曜の朝が高校生で混むようになりました。
彼らは思い思いに音楽を聴き、電子ゲームをしていたかと思うと、それをリンクスピーカーでバーチャルにして流したりするのです。突然、臨場感のある音楽が流れ、周りの人もびっくりします。
しかし、IDOが次世代教育に力を入れて以来、若者は増長しています。義を見てせざるは勇無きなり。私は言うことは言う男です。
注意したところ『俺たちがこれから養ってやるんだぞオヤジ』と言われました。図書館NPOの人たちも見て見ぬふりです。嫌ならば行かなければいいと言われるかもしれませんが、我々の給料は10年前から二割減っており、図書館は唯一の娯楽なのです。あのような若者が日本を背負うわけがありません。抜本的な対策を望みます」
この法は、東京都の公務員Kさん(56歳)から「僕が独裁者になったら」に寄せられた意見を元に考えた。Kさんは妥当と考える量刑欄は、プルダウンメニューから死刑を選択していた。
5年間やってきて、このような意見はとても多かった。
自分はささやかに、真っ当に人生を歩んでいる。だから若い世代の無軌道ぶりは許せない。IDOは手ぬるい。もっと法律で若者を縛るべきだ。
怒りとつきあうのはよくない。闇に住むもう一人の自分と会話を始めると、人はさらに闇を引き寄せてしまう。
心の闇と会話して、連想の世界でいくら人を責めても、明るい展望はみえてこない。むしろ、さらに悪い状況を引き寄せるだけだ。
闇との会話を始めたら、自らそれに気づき、打ち切る習慣、打ち切る技術を身につける必要がある。
だが怒りが努力の原動力になることもある。
時に怒りとつきあうことが、横着者と対峙する力となる。かつて、国民の金を自分に回して、豪邸や外車を買った人たち。罪刑法定主義にあぐらをかいて、法令にない犯罪で生業を得た人たち。そういう人たちを皆が水に流してはいけない。時に怒る人も社会には必要だ。
Kさんのような、邪魔者は法で縛れといった“法万能主義”が、全体主義につながるから危険だとは、僕は思わない。ただ社会を「自分が良くしよう」という気概のない人が、法に頼るのは健全ではない。
とは言えども、常識や倫理が廃れた世の中だからこそ、IDOが誕生した。
だから健全な社会規範を僕がつくる。より多くの国民がそれを信頼してくれるようになった時、一人一人が愛を持って、社会の人に接することができるようになるだろう。
ただし、それは5年ではできない。
日本人が真っ当に生き、他人のために役立とうと思う社会の実現は、次のIDOの時代に委ねることになった。
僕は法令内容が性急なものにならぬよう心がけてきた。次のIDOのあなたに、国民の動向をみて見直してもらいたい。
次回は7月31日に掲載します。
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