戻り道
「7番アイアンっていつ使うの?」【 18 】
プロゴルファー杉原輝雄が本を出した。
「ゴルフ人生50年、いまだ道なかば」学研 2008年5月
タイトルを見て、おいおい50年で道半ばはないだろうと思った。
日本初のプロゴルファー杉原と言えば、大変に成功したゴルファーであり、50年もやってきて道半ばでは、後に続く人は途方に暮れてしまう。
東京大学の合格通知をもらった人が、今の感想を聞かせてくださいと尋ねられ「ようやく、今生まれ落ちた赤ん坊の気分です」と言うようなもので、そんな人が目の前にいたら、はり倒したくなる。
だが、杉原を張り倒す気にはなれない。
本の副題に「がん克服」とあるからではない。
書名というものは、売るために、極端に象徴的な言葉を選ぶものだ。この「道半ば」という言い回しも、杉原は文中で使っていない。
杉原は、まだ夢は続いており、向上心を持ち続けていることを書いている。
よく有名な実業家や作家が「夢は諦めなければいつか叶う。諦めればそこで終わり」という。
一般人からみれば、既に夢を叶え向こうの世界に行った人が、余裕をかまして言っている言葉である。
「諦めればそこで終わり」は間違いないが、諦めなければいつか叶うは嘘だ。「叶う人もたまにいる」が正しい。
杉原の人柄に惹かれる理由は、その謙虚さにある。
杉原はこの本でここまでの成果を率直に喜び、幸せだと言っている。
現状を幸せだと思うことは、よい未来をたぐり寄せるために、とても大切な心がけだ。
「夢はきっと叶う!」という自己暗示を推奨する人は、信用できない。
それよりも、今が幸せだと感じ、夢はそのうち叶うかも知れないな。でも、叶わないのかも知れないな。と思う程度が、ちょうどいい。
20代の頃「40代で身につけるゴルフのマナー」の本を読み、いつもゴルフ場のトイレでは、置いてあるおしぼりで洗面台を拭いていた。
ゴルフ場に向かって、クルマを走らせている時は、とても楽しかったが、帰りのクルマは、概ね自分に怒っていた。
ゴルフに求めていたものは、紳士の称号か。好スコアという虚栄か。
あるいは、何も求めてはいなくて、上達のプロセス、希に出る好打、自然の散歩が楽しかったのか。
長くゴルフを離れていると、この次に戻った時には、とてつもなくうまくやれる気がする。
その理由は、あれだけ多くのミスショットをしながらも、ゴルフを嫌いにはならなかったからだ。
人は飽きることがある。事情により離れることもある。
だが、嫌いにさえならなければ、またいつか、そこに戻ってくる。
(終わり)
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