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2008年9月24日 (水)

たすき、再び「走る男」へ戻る

 ランドマークタワーを横目に見て、隊列は海を目指す。
 この先にあるのはヨットの帆を張った形をした高級ホテル。
 森脇健児さんは、ティールームで待っているのだろうか?

 最後の横断歩道を渡り、僕ら代走「走る男」はホテルの敷地内へ入っていく。
 森脇さんはどこだ?
 ホテルのガラス越しに中をのぞきこむ。
 向こう側からもこちらを見て笑っている。

 あ、いた
 と思ったら、別人だった。

 さらに舗道を進むと、前方のベンチにたたずむ男性が一人。
 そうか、立っているのもきついんだな。
 皆が速度をゆるめて、駆け寄った。

 知らないおじさんだった。

 テレビ局スタッフの先導があるわけでもなく、カメラも回っていないようだ。
 代走「走る男」は舗道を左に折れて、右に折れる。
 もう海が目の前に迫ってきた。

 「あ、いた!」
 先頭を走っていた走る男の一人が見つける。
 歩道橋から見下ろしたところに、水色のシャツを着た男が一人、こちらに向けて手を振っている。

 「けんじ」「けんじ」
 誰からとなく、けんじコールが始まる。

 ふつー、逆だろ

 僕が、誰にも聞こえないよう小声でつっこむ。
 ふつーは走っている人に向かって、応援者がコールするものだ。

 大勢の男が走っていて、一人の男が応援している。
 妙な場面設定である。
 けんじコールを連呼しながら、43人の男たちが階段を駆け下りる。

 日曜日のみなとみらいの海辺。
 暑かった一日をしめくくる、気持ちのいい浜風で涼んでいた人々に、この「走る男」はどう映っているだろうか。

 階段の麓まで森脇さんが歩み寄る。
 ゴール
 たすきが代走「走る男」から、再び「走る男」森脇健児さんの手に戻った。

 一人一人が握手に歩み寄る。
 一人一人の手を大事に握り返す「走る男」

 僕は止め忘れていた、ガーミンフォアアスリートのSTOPボタンを押した。
 テレビでおなじみのあの、ぐにゃりとした電子音を立てて、半日の位置と時を刻んだGPSが鼓動を止めた。

10月1日につづく
(次回で、代走「走る男」編は最終回です)

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