走る男の財産
放送の「走る男」を見ていると、森脇さんは
実によくしゃべっている。
もちろん、しゃべっているところを選んで
放送しているのであって、四六時中喋って
いては走れないだろう。
そう思って、Oさんに尋ねてみた。
森脇さんって、走りながらよくあれだけ喋べれますよね?
「そうなんですよ。カメラ回してたら、
ほんとよく喋るな~ってくらい、ずっと喋ってますからね」
・・・
ほんとに喋っているらしい。
ただこの時は、喋りながらでも走れるだけの
体力がある人なのだろうと考えていた。
交差点を1つ超える。
幸い、信号は青。
停まらずに前に進む。
少し会話をした後、Oさんの自転車は、後方
に下がって伴走している。
放送の「走る男」を見ていると、伴走は割と
短い距離で終わっている。
長くても5km程度。
映像に変化をつけるために、短く区切っている
のだろう。
陽は完全にビル街の向こうに落ちた。
集合してから、5時間が過ぎている。
お昼には「一人5kmくらい走らせてくれないかな」
と考えていたが、今、その考えはまったくない。
前方に、代走「走る男」仲間を乗せたマイクロバス
が見えてきた。
次のランナーが手を振って、待っている。
ほどよい距離だ。
長く走ることに、意味はなかったと知った。
この場に来ようと決めたこと
代走「走る男」の仲間になったこと
森脇さんの長い旅である「走る男」の一人になれたこと。
心に築いた財産は、日にちが経つにつれて
大きく感じられた。
最後のランナーがみなとみらいの橋を越えた。
かつて、何度も訪れたこの街に、
今日は「走る男」の仲間たちと降り立った。
午前の部、船橋からお台場までのランナー達は
バスを降りた後、JRを乗り継いでここまでやって
きていた。
最後の区間は 43人の「走る男」が、全員で走る。
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