ぎょががんまつり
郊外の大型ショッピングストアで、エレベーターに乗っている。
自走式の駐車場が3フロア
車はいつも、空いている最上階に停める。
下の階にいくほど、駐車場は混んでいる。
売り場のフロアに近いからである。
混んでいるということは気にならず、自分の移動距離が短いことに優先順位の一番を置いている。
そういう人たちは、車のことには無頓着な人が多い。
車のすぐそばまでカートを押していき、カートを放置する。
カートを他人の車にぶつける。凹ませたり、傷を入れながら。
他人がトランクに荷物を積んでいるのに、その人めがけて車をバックしてくる。
ショッピングセンターの中には、輪留めがない所がある。
そういう店では、荷物をトランクに積んでいた人が、車と車にはさまれる。
背が低い、小さい子供はドライバーから見えていない。
ショッピングセンターに
「なぜ、輪留めを設置しないのですか?」
と尋ねたことがある。返答はこうだった。
「カートを押して荷物を運ぶ方にとって、輪留めがあると返って危ないのです」
なにが「返って」なのか
人が車に挟まれるよりも、カートを押す人が荷物を落とすことの方が危ないというのだから、流通業界の常識は、一般のそれとは違うのだろう。
人間、自らの正当性を主張するために、詭弁を弄するようになったらお終い。
車に乗り降りする時、隣の車にドアをぶつけることなんて、平気、平気。
悪いことだとは思っていない。
隣の車に当たってから、
「あぁ、ここまで開けられるんだ」
と確認している人もいる。
最上階からエレベーターに乗った。
階段もあるのだが、下りの階段は膝に悪い。
階段を踏み外して転倒したら、脳に障害を負うかもしれない。
そうなると、仕事ができないどころか、病院で寝たきりになることだってある。
危険なことは、自分の中に限らず、他人の要因もある。
親がコントロールしていない子供が、背後からダッシュしてきて、ぶつかることがある。
そこらじゅうの人にぶつかって走った後に 「危ない!」 と言っても遅い。
そもそも、そこは「危ない!」じゃなくて 「ほかの人に迷惑でしょ!」か「やめなさい!」と言う場面だ。
階段を登ってきた怖いお兄さんに「道を譲らなかった」と、絡まれるかも知れない。
エレベーターが停まって閉じこめられる確率よりも、階段は、はるかに危険が身に及ぶ確率が高い。
最上階の駐車場は空いていて、エレベーターは僕一人。
そこに途中の階から、二人連れの夫婦が乗ってきた。
エレベーターの中には、その週末のチラシ、月間特売カレンダーが掲示されている。
夫は発泡酒の特売価格を見つめている。
夫 「こんど義兄さん来るから、発泡酒 買っとこうよ」
妻 「だめよ! 一ヶ月、一箱って決めたよね?」
夫 「しゃくしぎょうじなこと言うなよ」
・・・・
え、妻 つっこみ無し?
それを言うなら、杓子定規 だろ
夫の何食わぬ顔を見る限り、渾身のギャグというわけではないと想う
天然夫婦か
2階の売り場でドアが開いた。
誰かが乗ってくるのだろうと思ったが、エレベーターの前には誰もいなかった。
くだんの妻が「しめる!」と 夫にボタン操作を要求する。
夫、[閉]ボタンを押す
エレベーターは1階に向かって、降り始めた。
妻 「おにくびっくりいち・・」
掲示板の月間イベントカレンダーの文字を、声を出して読んでいる。
今週のイベント覧を見ると「お肉びっくり!市」とある。
車の助手席に乗ると、沿道に流れる看板の文字を読みあげ続ける人がいる。
彼女も、その一人なのだろう。
それにしても、しゃくしぎょうじはスルーらしい。
妻 「ぎょががんまつり か」
来週のイベント欄を見ると、ぎょががん・・っておい
それは・・ 思わず声が出そうになった時
ドアが開いた。
夫婦は降りて行った。
夫 「あれは、うおがしだろう、ばか」
妻 「へぇ、そうなんだ」
・o・;)
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