« 燃費59キロ走るバイク | トップページ | リーグカップとカーリングカップ »

2008年11月 8日 (土)

片岡の笑顔 ラミレスの当惑

 日本シリーズ第5戦 西武3―7巨人(11月6日 西武ドーム)

 

 この試合の7回1アウトで印象深い出来事があった。
 このことに実況のアナウンサーは一切触れず、メディアのニュースも言及していない。
 主役は巨人ラミレス、西武片岡(ショート)
 脇役は二塁塁審

 

 巨人が1点を追う7回。
 ここまで巨人を2安打に封じていた涌井の低めのボール球を、ラミレスがセンターに打ち返す。
 涌井のわずか左横を地を這うように通り過ぎた打球が、セカンドベースの右端に当たったことでそれは起きた。

 

 本来ならば、ボールは勢いよく中堅手の前に到達し、打者走者は一塁で止まる。
 しかし、ベースに当たって勢いを失ったボールは、右翼手の前にのろのろと転がっている。
 打球が死んでいる。
 そう判断したラミレス 「一塁コーチの福王が止めていた」と思ったが二塁へ。

 

 映像が右翼手とラミレスの相対位置をとらえた時、巨人ファンは凍り付いた。
 ラミレスはまだ一二塁の中間あたりにいる。
 「暴走だ・・」

 打順から言って、この回に追いつかないと巨人は苦しい。
 8回は下位打線に回り、9回は押さえ投手が出てくるだろう。
 さぁ、追い上げだと思ったヒットが、二塁憤死という最悪のケースになれば、勝負の流れは相手に傾く。

 

 しかし、走り出してからが速いラミレスは、ここから加速した。

 

 タッチをかいくぐるために、セカンドベースの左側に回り込む。
 足が先にベースに着いた。
 ボールが後から来た。
 セカンドベースカバーに入ったショートの片岡。
 ラミレスの足に「ぱしーん」とグラブを当て、左手を高々とあげてアピール。
 二塁と三塁を結ぶ線上にいた二塁塁審が、近づきながら両手をさっと広げる。

 

 審判の裁定を待つまでもなく、悠々とセーフだった。
 巨人ファン、安堵のため息

 

 と思ったら、加速したうえに左に回り込んだことで、ラミレスの体勢が崩れた。
 ベースから離れようとする右足。
 腹筋を使い必死に踏ん張るラミレス。
 だが、加速していた余力を殺しきれず、わずかに接していた足がベースを離れた。

 

 それを見た片岡。高々とあげていた左手ですかさず、タッチにいく。
 グラブはセカンドベースとラミレスの右足の間に挟まった。

 

 少しかがんで目を凝らす二塁塁審
 それを見上げる片岡
 戸惑うラミレス

 

 一難去ってまた一難。巨人ファン、またも凍り付く。
 今度は固唾を呑んで裁定を待つ。

 

 審判の両手は、再びゆっくりと両横に広がった。
 特に指さし確認をしたり、言葉で説明したようには見えなかった。

 

 そして、カメラが三塁方向からのアップに切り替わった時、その瞬間がきた。

 片岡が笑ったのだ。

 「ごめん」と右手一本で拝むジェスチャーで、ラミレスに謝りながら、笑っている。
 ラミレスは真意の読めない当惑の表情を見せている。

 

 片岡は元々ルックスがいい選手。
 さらに、さわやかな笑顔が戦場に咲いた一輪の花を思わせた。
 完成当時「野つぼ」と揶揄された西武球場(現西武ドーム)に涼風が吹いた。

 

 この場面について、報知新聞に掲載された渡辺監督のコメントは次の通り
 「相手(巨人)に勢いを付ける好走塁だった」
 実際はどのように話したかわからないが、紙面で見る限り「あれはアウトだ」とは言っていない。

 

11月10日に続く

 

| |

« 燃費59キロ走るバイク | トップページ | リーグカップとカーリングカップ »

スポーツ」カテゴリの記事